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福家警部補の再訪  (ねこ3.8匹)

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大倉崇裕著。創元推理文庫

しがない探偵から転身し上昇気流に乗った警備会社社長、一世一代の大芝居を自作自演する脚本家、天才肌の相棒と袂を分かち再出発を目論む漫才師、フィギュア造型力がもたらす禍福に翻弄される玩具企画会社社長——犯人側から語られる犯行の経緯と実際。対するは、善意の第三者をして「あんなんに狙われたら、犯人もたまらんで」と言わしめる福家警部補。百戦不殆のシリーズ第2集。著者が刑事コロンボに寄せる熱い想いに溢れた、4編を収録。(裏表紙引用)
 
福家警部補シリーズ第2弾。
第1弾を読んだのが前すぎて福家さんがどんなキャラだったかとか全然覚えていなかったのだが…女性だっていうのはもう言っていいのよね。作風がコロンボ風の倒叙ものだというのも忘れてた。
 
「マックス号事件」
元ゆすり屋の警備保障会社社長が情報屋の女性に強迫されてホテルでその女性を撲殺した事件。クルーズ内で殺人とか、証拠隠滅のために現場に戻るとかアホちゃうかと思いながら…。細かいことを詰めて詰めて犯人を追い詰めていく福家さんこわい。
 
「失われた灯」
脚本家の男が盗作のことで脅迫してきた古物商の男を焼殺。ストーカーの俳優志望の男を利用し、成功したかに見えたが…。メモを取って毎日行きつけのバーに捨てる習慣とか、ちょっと都合のいい設定かな。原稿にナンバー振ってたり。あれだけ何人もの人に聞き込みをして推理を詰めながらも、失言ひとつで陥落。それだけ福家さんが迫力ってことか。
 
「相棒」
ベテラン漫才師が解散の危機。男は相方を2人のための家で殺害したが…。タイトルもだけどずっと「相棒」呼びなのが気になった。なんで「相方」じゃないのかな。さすがプロに頼んだ台本、漫才のくだりが面白かった。長年コンビを組んできたと思えばこれほど悲しい事件もないな。福家さんはお笑い好きのようだから、悲しさもひとしおなのでは。一番好きだったのがこれ。
 
「プロジェクトブルー」
大倉さんの趣味全開の事件。玩具企画会社社長の男が、自分のせいで倒産した造形家から脅迫され、工房で造形家を撲殺するが…。なぜ現場で使った綿棒をそこに捨てるのか。。福家さん、こういうのにも詳しいのね。ミステリ的にはこれが一番冴えてたかなあ。ちょっとしたことで露呈するもんだ。福家さんの力が大きいけれど。
 
以上。
読みやすいしやはり面白かった。ところどころツッコミどころはあるものの、福家さんの眼力には常人にはないものを感じる。普通そんなところ見てるか?というところから犯人を追い込むのが爽快。最初みんな福家さんのこと舐めてるから余計に。ただ、なぜいつも単独行動?
キャラ的には小柄で童顔、天然。でも仕事バリバリできる女性ってことで「いきもの係」シリーズの薄ちゃんと同じ系統。でもキャラが被ってる感じがしないのがさすがかな。