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摩天楼の怪人  (ねこ4匹)

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島田荘司著。創元推理文庫

ニューヨーク、マンハッタン。高層アパートの一室で、死の床にある大女優が半世紀近く前の殺人を告白した。事件現場は一階、その時彼女は34階の自室にいて、アリバイは完璧だったというのに…。この不可能犯罪の真相は?彼女の言うファントムとは誰なのか?建築家の不可解な死、時計塔の凄惨な殺人、相次いだ女たちの自殺。若き御手洗潔が摩天楼の壮大な謎を華麗に解く。(裏表紙引用)
 
御手洗潔シリーズ第21弾。
 
なかなかに分厚い&字が小さいのでビビったが、会話文や改行が多いので意外とサラリと読めた。薀蓄が出る率も島田作品にしては小さいし。
 
ということで21歳の御手洗潔の推理。
舞台はニューヨークのマンハッタン。セントラルパーク・タワーで大女優が肝臓癌で死去。その臨終に立ち会った御手洗は、女優がかつて1階にいた大物興行家を34階にいながら銃殺できた謎を解くことになる。スターになるため邪魔者を次々消していったというファントム、爆発によりタワーの窓という窓だけが破砕され転落死した建築家、高層階で拳銃自殺したと見られる女優や踊り子、時計塔に体を拘束され、針で首を切断された演出家――。島田作品らしい不可思議な謎が次々と提示される。
 
最近の作品のように舞台があちこち移動しないので読みやすい。時代は移るが。そして壮大すぎる真相のドラマチックなこと。エレベーターのトリックが肩すかしなことや、銃にくるまれたストッキングの謎がそのまんまだったことを除けば全て理論的に可能な気がしてくるほど派手派手しく説得力がある。突飛すぎて笑えるレベルなのだが、こんなに楽しめるならまあいいか、と思わせる世界観がある。悲劇のファントムの人生に思いを馳せると映像がまざまざと浮かべることができるあたりそこはやはり格の違いか。
 
ところであの地下都市のくだりはなんだったんだ。