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光る鶴  (ねこ3.6匹)

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島田荘司著。光文社文庫

捜査一課の吉敷竹史は、知人の葬儀で九州・久留米市へ。そこで出会った青年から、義父の再審への協力を頼まれる。二十六年前、三人の女性を殺して死刑判決を受けた「昭島事件」。すでに人の記憶は風化しており、冤罪事件を覆す証拠は見つかるのか(「光る鶴」)。―吉敷竹史は、なぜ刑事になったのか(「吉敷竹史、十八歳の肖像」)の他、文庫書下ろし(「電車最中」)を収録。(裏表紙引用)
 
吉敷竹史シリーズ第16弾。これだけ読みこぼしていたのでやっと読んでみたが…まあ、読んでも読まなくても、ってぐらいの感じだったかな。吉敷ファンならたまらないかも。
 
「光る鶴」
250ページ強の長編。
これは現実の秋好事件を下敷きにしたものらしい。あとがきを読むまでフィクションとして読んでいたので、事件の恐ろしさに震え上がっていたのだが…現実とは。死刑囚の冤罪を吉敷が晴らすという内容。赤ん坊を線路と線路の間に避難させるほうが危ない気がするのだが…。時刻表もの?を久しぶりに読んだ。相変わらず吉敷さんは誠実で熱い男だったので安心した。
 
「吉敷竹史、十八歳の肖像」
短編。タイトル通り。吉敷さんがどうして警察官になったのかが描かれる。唯一の友人が闘争で殺された、っていうのが辛い。文学好きの吉敷さんらしく、宮沢賢治に影響を受けているのが嬉しかった。それにしてもどうしようもない時代だなあ。
 
「電車最中」
舞台は鹿児島。建設企画会社の課長が自宅で射殺された事件を、刑事の留井が追う。この時代の捜査って大変だな。今なら最中の情報ぐらいスマホで一瞬だもんね。そのかわり人々の口が軽いから個人情報とかベラベラ喋ってくれるけど。何日も何人もかけて調べて分からなかったことが、吉敷さんに電話したら一時間以内で判明するっていう(笑)。事件はそれが分かれば解決するようなものだったけど、ラストの留井と吉敷さんの語らいがしっとりしていて良かった。
 
以上。古いっちゃ古いけど、人情系でもあるしまあまあだったかな。こういう系統って、一つのことだけを追って(この最中はどこの店の最中か、とか何時何分に誰それがそこにいたかどうか、とか)それさえクリアすれば解決するから逆に新鮮だった。