すべてが猫になる

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ヴォイド・シェイパ  (ねこ3.8匹)

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森博嗣著。中公文庫。

人は無だ。なにもかもない。ないものばかりが、自分を取り囲む―ある静かな朝、師から譲り受けた一振りの刀を背に、彼は山を下りた。世間を知らず、過去を持たぬ若き侍・ゼンは、問いかけ、思索し、そして剣を抜く。「強くなりたい」…ただそれだけのために。(裏表紙引用)
 
ヴォイド・シェイパシリーズ、ってことでいいのかな。「無を形作る人」的な意味らしく、それが主人公の人生のテーマになっている感じがするからそれでいいんだろう。
 
と、いうことで森さんのまさかの時代もの。時代ものと言ってもそこは森作品。文体は森節のままだし(スカイ・クロラと似てる)、歴史上の人物も土地名も何も出てこない。キャラクターも「ゼン」「カシュウ」「イオカ」みたいな感じしかないので覚えやすい。ので、これ読むのに歴史苦手とか一切関係ないと思う。侍が主人公なので、だいたいそのぐらいの時代のもの、というだけ。地域も年代も特定する記述はないのでまあ読みやすいったらない。
 
カシュウという豪剣に育てられた、剣士の若者ゼンが、カシュウの死をきっかけに人里へ下り様々な人々と出会い、生きることの価値や剣士としてどうあるべきかを己に問いかけながら旅をしていく、というお話。出会う人出会う人、みんな悟った感じなのが凄いな。ゼンはカシュウと自然、動物以外の世界にいなかったからどこか他人とズレていて面白い。旅の道中女の人2人に恋されてる感じだからモテ男だね。禅問答みたいな感じの会話もあるし、一生答えが出ないようなことを知ろうとしているからこれからどんな人と出会ってどう変わって行くのかなって感じ。うん、すごく良かった。