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言葉人形/Creation and Other Stories  (ねこ4匹)

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ジェフリー・フォード著。谷垣暁美編訳。東京創元社

かつて野良仕事に駆り出された子どもたちの為に用意された架空の友人、言葉人形。それはある恐ろしい出来事から廃れ、今ではこの博物館の片隅にその名残を留めている――表題作ほか、光と星の秘密を追う研究者の実験台となった無垢な娘の運命を綴る残酷な幻想譚「理性の夢」、世界から見捨てられた者たちが身を寄せる幻影の王国が、少女王妃の死から儚く崩壊してゆく「レパラータ宮殿にて」など、世界幻想文学大賞、シャーリイ・ジャクスン賞、ネビュラ賞、MWAなど、数々の賞の受賞歴を誇る、現代幻想小説の巨匠の真骨頂ともいうべき13篇を収録。(紹介文引用)
 
幻想文学の一人者ジェフリー・フォードの<海外文学セレクション>。お仲間さんの記事を読むまで全く知らない作家さんだったのだがそうそうたる経歴をお持ちのようで、無知を恥じる。「短篇傑作選」ということなので、13篇なる作品のどれもバラエティに富みながら駄作はないという印象。とはいえ改行がほぼなく字がびっしり、会話文少なめの神視点多め、訳のせいなのかどうなのか、最初はかなり取っ付きが悪い。一篇目が「創造」でなかったら多分挫折していた。もう少し読んでみようと続けて三篇読んでみたら結構ハマってしまったわけだが、それでも作品によってはどうしても入り込めないものもあったりして。
 
多いので好きだった作品を。
前半の「創造」「ファンタジー作家の助手」は様々な愛情のかたちにジンとくる。「<熱帯>の一夜」の老人の反撃は呪いより怖い。「光の巨匠」の光の錬金術師が語る闇の話はほとんどウルトラマン。嵌められたってこと?「私の分身の分身は私の分身ではありません」はダーク系。自分の分身に、悪い分身がいるっていう突飛な設定。分身に家があるよ!これめっちゃ好き。1番好き。表題作「言葉人形」は労働力にならない子どもたちの代わりが野良友だち「言葉人形」だという不可思議な伝統の話。「夢見る風」は毎年ある町を襲う風が人をナイフや鏡に変えるっていう迷惑な話なんだけど、それが突然なくなったら…?っていうワクワクするお話。「珊瑚の心臓」は人間を珊瑚に変える剣、後半ドロドロ恋愛っていう展開にビックリ。ラスト「レパラータ宮殿」は偽物の国民と王妃を喪って悲しみに暮れる王の崩壊と再生の物語。
 
人によって好きな作品は分かれると思う。円環構造とかよくわからんお話も混じっていたし。文体が濃密で設定が独特なのでお話がどう展開するのかサッパリ読めないところが魅力だった。