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休日はコーヒーショップで謎解きを/The Red Envelope and Other Stories  (ねこ4匹)

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 ロバート・ロプレスティ著。高山真由美訳。創元推理文庫

拳銃を持って押し入ってきた男は、なぜ人質に“憎みあう三人の男”の物語を聞かせるのか?意外な真相が光る「二人の男、一挺の銃」、殺人事件が起きたコーヒーハウスで、ツケをチャラにするため犯人探しを引き受けた詩人が、探偵として謎解きを繰り広げる黒い蘭中編賞受賞作「赤い封筒」。正統派推理短編や私立探偵小説等、短編の名手によるバラエティ豊かな9編をお贈りします。(裏表紙引用)
 
お初の作家さん。年末ランキングに入っていたので早速。このほのぼのしたタイトルにはいい意味で騙された感。コージーミステリ+ノワール小説という一見真逆のジャンルを融合させた作風。まずは各編の感想を。
 
「ローズウィルのピザショップ」
のどかな町のピザショップに現れた紳士的な客は元ヤクザ?後に起こる騒動と登場人物たちのほのぼの感が対照的でいい感じ。
 
「残酷」
上院議員を射殺した後の殺し屋が、車をレッカー移動されていたという…(笑)。そこからあれよあれよと転落していく様が滑稽で面白い。ウェストレイク風。
 
「列車の通り道」
孤児列車に乗せられ離れ離れになった三兄弟。20年ぶりに会いに来た兄は裕福な家に引き取られていた。そして一緒に自分たちの弟を殺した一家に復讐をしようと持ちかけられる。計画は思った通りに行かないもの。贖罪と再生の物語。
 
「共犯」
保護観察中の男が自分に不利な証言をした男を殺し逃亡したらしい。ペンフレンドのマーガレットのところへ刑事が聞き込みに来たが…。マーガレットが何者か分からないところが肝。彼らの選択は正しかったのだろうか?ローレンス・ブロック風。
 
「クロウの教訓」
探偵マーティ・クロウもの。学区外から通ってくる児童たちを尾行する仕事を遂行するクロウだが、ここから得られる教訓は「薮をつつくな」ってところかな。
 
「二人の男、一挺の銃」
オフィスに押し入ってきた男に手錠をかけられ銃を向けられた男。犯人の語る物語が現実と繋がる快感。ジャック・リッチー風。
 
「宇宙の中心 ーワシントン州シアトル、フリーモント地区にて」
タイトルの意味が分かるのは終盤。ピーティが目撃した殺人事件。その犯人らとの攻防からの意外な真実。これは混乱して再読した。やられたなあ。
 
「赤い封筒」
詩人デルガルドを探偵とした推理ものの中編。レックス・スタウト作品をモデルにしているらしい。自由詩で解決する、っていうのが面白いな。登場人物が多すぎて苦戦したがキャラクターものとしては楽しめる。
 
以上。
バラエティに富んだ作品が9編。犯罪小説という共通点はあるものの、どれも色が違っていて飽きずに読めた。邦題「休日はコーヒーショップで謎解きを」が全く作品世界に合っていない気がするのだがわざとだろうか?個人的にはジャック・リッチーテイストでとても気に入ったが。先に出た別の作品も読んでみようと思う。