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犯人選挙  (ねこ3.7匹)

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深水黎一郎著。講談社

築30年の「大泰荘」で8人の大学生が共同生活を送っていた。ある朝、マッチョな男性住人が鍵のかかった自室において遺体で発見される。深夜には建物の玄関にチェーン錠がかけられるため、たとえ鍵を持っていても中には入れない二重の「密室」で誰が彼を殺したのか?住人の誰もが怪しく、誰にも動機が…。「7つの選択肢」から犯人を選んで下さい。先行読者投票の結果も収録!(紹介文引用)
 
深水さんの最新作。マルチエンディング+読者投票で犯人を決める、という企画が面白そうだと思って読んでみた。
 
大泰荘という20歳前後の若者8人が共同生活をしている建物が舞台。文学青年の大祐の視点で、自室で絞殺されたフリーター・謙吾を巡る事件をミステリーマニアの洸一と共に推理していくのが第1部。第2部からはいきなり意外な展開の変換があり、戸惑った。ほとんどギャグだし。まあ、そこから企画通り7通りの解決が選べるというわけ。人気のあった犯人なんかも発表されていて楽しめる。読者の推理も紹介されていたりね。投票はともかく、読者にも自分で推理して欲しいという作者の願望が込められているもよう。すいませんね、すぐに解決編を読む読者で。
 
主要人物の大祐と亜沙美があまり好きではなかったので(頭がいいだけで人としてはアホっぽい。純粋ともいえる?)ちょっとキツかったが、他の登場人物は解決によって性格が変わるとはいえなかなか個性的で良かった。個人的には「他の人物犯人」が好きだった。リアリティゼロだけど。まあそれを言うとどの解決編も甘いというか単体作品だったら通用しないようなものばかりだったように思う。(論理的には破綻していなくても、読み物としては読ませる水準に達していない)あと、深水さんならさらにこの後ひとひねりあっても良かったと思う。あんなコメディチックな終わりじゃなくて。
 
まあでも、挑戦的という意味では面白いことをしたなあと思うのでよきかな。