すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

煽動者/Solitude Creek  (ねこ4.2匹)

f:id:yukiaya1031jp:20191227135543j:plainf:id:yukiaya1031jp:20191227135551j:plain

ジェフリー・ディーヴァー著。池田真紀子訳。文春文庫。

ボディランゲージから嘘を見抜く天才、キャサリン・ダンス捜査官。彼女が尋問の末に無実との太鼓判を押して釈放した男が麻薬組織の殺し屋だったと判明、責任を負って左遷されてしまう。だが左遷先で彼女は、満員のコンサート会場にパニックを引き起こして人々を殺傷した残忍な犯人に立ち向かうことに…。シリーズ第四作。(上巻裏表紙引用)
 
キャサリン・ダンスシリーズ第4弾。
 
新刊が出たと知りウキウキ手にしたらキャサリン・ダンスの方だったのでちとガッカリしたのは私だけではあるまい。作品レベルはそれほど変わらないのに、どれほどキャラ読みしているかが分かる。
 
西海岸のナイトクラブ・ソリチュード・クリークで死者3名を出す大事件が起きた。クラブ内に煙が充満し、パニックになった客が開かなくなった非常口に殺到、将棋倒しとなったのだ。しかし火災は発生しておらず、非常口の前にはトラックが停められていた。一方ギャング対策のパイプライン作戦で挙がった証人・セラーノに得意のキネシクスで事情を聞いていたキャサリン・ダンスは、実は組織のヒットマンだったセラーノを無関係と判断、逃がしてしまう。ダンスは処分され、民事部(交通課)へ異動することになった。
 
評価が分かれるとしたら、ダンスのロマンス部分と子どもたちの問題に大きくページを割いている点だろう。自分の評価が高いのは、本編の事件よりこちらのほうがより興味を持って読めたことによる。元カレのなりそこないオニールと、交際中の恋人ボーリング、どっちとくっつくのかドキドキ。まさかああなるとは…。マギーの問題は可愛いもんだったけど、ウェスがね…でもこれもまさかがさらに意外な真相に変わって、ホっとしたところもある。
 
もちろん事件の部分も面白かった。煽るだけで手を下さない、目的が何かも分からないこの未詳は今までにはいなかったタイプの犯罪者。群集心理の恐ろしさも見せつけられた。正直、日本人ならここまで直接的に暴力化しないんじゃないかなと思ったりもしたが…思い上がりだろうか。ああいうサイトを見たがる気持ちまでは理解できても、お金を払ってまで、というのはやはり異常だよなあ。キネシクスをあまり使わないのと、多少の中だるみがあったのでそこは減点だが、ラストが最初に繋がるというのはこういうことかとそれはもうビックリした。今回たいしたことないかな、と思っていたので。こうなると煽動者、というのは未詳のこととは言い切れないかも。あと、邦題はカタカナで統一して欲しいなあ。