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捕獲屋カメレオンの事件簿  (ねこ3.8匹)

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滝田務雄著。祥伝社文庫

元刑事でオカルト・ライターの浜谷良和は、脳の中に3Dプリンターを持つ。よろず捕獲がうたい文句の「オフィス・カメレオン」女社長阿過沙汰菜を助手に、都市伝説のような奇怪な現場を取材する。ふたりはそれらの真相ばかりか、背後に隠されている“本当に触れてはいけないもの”までも丸裸にしてしまい―凸凹コンビが人間の心の奥底に眠る業と悲哀を炙り出すミステリー。(裏表紙引用)
 
滝田さん、意外と田舎の刑事シリーズだけじゃなく色んな作品描いてらっしゃるのねえ。これも前読んだ「和気署」並に、シリーズ化してもおかしくないレベルだったけど。
 
主人公は元警視庁敏腕刑事・浜谷良和(はまやらわ)。事情があって警察を辞めた後、シンデレラ出版「季刊パンプキン」編集者兼代表取締役・諏訪院雲斗の裏稼業・「オフィス・カメレオン」で捕獲屋として活動している。諏訪院は引退していて、現在は娘の阿過沙汰菜(あかさたな)が社長。良和には特別な能力があり、一度見た三次元の空間を後に脳内で正確に再現することができる。沙汰菜のほうは遅刻癖があって天然だが、機械工作加工技術が凄い。二人のこの特殊能力で、様々な依頼先で起きた様々な事件を解決していくという内容。
 
封印された絵の秘密を暴いたり、食通男の高級ワインを取り返したり、幽霊事件に関わったり、試作車の盗まれた鍵を捜索したり。それぞれの話に特色があって飽きさせないのがいい。1話はこの作品そのものの設定が暴かれるものだし、3話は捕獲こそしないが読者側への仕掛けがあったり、最終話では良和の過去についてが詳細に語られるものだし。良和の元同僚・御小會殿歩(おこそとのほ)のキャラがいいね。名前どうにかならんのかって感じだけど。
 
犯罪スレスレ(いや、犯罪)で捜査する主人公コンビがとにかくナイス。基本はコメディ調で笑えるが、ちょっと真面目に信頼関係が伺えたり重く辛い要素もあったり、そこに色んな事件が絡んで物理的に解決して、本当によく考えられてる。詰め込みすぎ感はあるけど、キャラといい完成度は高いと思う。これをもう少し一般向けに皮を剥いたら現在の滝田作品になるかなあ。