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遠い唇  (ねこ3.9匹)

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北村薫著。角川書店

小さな謎は、大切なことへの道しるべ―ミステリの巨人が贈る極上の謎解き。 小さな謎は、大切なことへの道しるべ。 ミステリの巨人が贈る、極上の“謎解き”7篇。■「遠い唇」 コーヒーの香りでふと思い出す学生時代。今は亡き、姉のように慕っていた先輩から届いた葉書には、謎めいたアルファベットの羅列があった。 ■「解釈」 『吾輩は猫である』『走れメロス』『蛇を踏む』……宇宙人カルロロンたちが、地球の名著と人間の不思議を解く? ■「パトラッシュ」 辛い時にすがりつきたくなる、大型犬のような同棲中の彼氏。そんな安心感満点の彼の、いつもと違う行動と、浴室にただよう甘い香り。 ■「ビスケット」 トークショーの相手、日本通のアメリカ人大学教授の他殺死体を目撃した作家・姫宮あゆみ。教授の手が不自然な形をとっていたことが気になった姫宮は、《名探偵》巫弓彦に電話をかける――。 全7篇の、一筋縄ではいかない人の心と暗号たち。 解いてみると、“何気ないこと”が光り始める。(紹介文引用)
 
北村さんの短篇集。連作ではないけれど、言葉の美しさや人間の感傷、暗号当てなど、北村さんの世界観が全作に光る。
 
「遠い唇」
 先輩から届いた年賀状の暗号を解くと、彼の真の心が露わになったお話。これを「遠い唇」と表現するセンスに脱帽。
 
「しりとり」
編集者の亡くなった夫が菓子包みに残した暗号を解く。2人が出会った時の会話がユニークで私でも惚れそうだし、それを2人ともいつまでも記憶していたのがいい。
 
「パトラッシュ」
ある仲良し夫婦の日常会話。パトラッシュとあの・・・パトラを掛けているのがおかしい。
 
「解釈」
本屋での親子3人の会話から始まる。宇宙人が彼らの話題にしていた「吾輩は猫である」「走れメロス」を翻訳機にかけ、独自の解釈を始めるのが笑える。こういうの好き。カルロロン・カルロロンロン・カルロンロン…(笑)。
 
「続・二銭銅貨
乱歩作品の新解釈。元を知っていた方が楽しめると思う。暗号が複雑で解けるわけないレベルだけど、ちょっと狂気を感じる…。
 
「ゴースト」
編集者の朝美は、菜の花のように元気で明るいと周りから思われている。それが少ししんどいのかな。ゴーストの比喩が出だしの恋愛とも重なっていてうまい。
 
「ビスケット」
18年前に記録者として関係していた「巫名探偵事務所」が関わった事件。現在また似たような撲殺事件が発生してしまう。ダイイングメッセージには専門知識が必要だけど、この作品だけミステリしていて読み応えあり。
 
以上。
文字数が少ないのでサササ~っと読める。だけど必ず何か残るものがあって、さすがだなあという感じ。しんどい本が続くとこういうのに癒される。