すべてが猫になる

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わが母なるロージー/Rosy & John  (ねこ3.7匹)

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ピエール・ルメートル著。橘明美訳。文春文庫。

パリで爆破事件が発生した。直後、警察に出頭した青年は、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、金を要求する。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は、青年の真の狙いは他にあるとにらむが…。『その女アレックス』のカミーユ警部が一度だけの帰還を果たす。残酷にして意外、壮絶にして美しき終幕まで一気読み必至。(裏表紙引用)
 
カミーユシリーズがこの中編をもって遂に終了。…たぶん。本作は200ページ強の中編で、時系列では「その女アレックス」の次にあたるらしい。なのでカミーユさん、アンヌと付き合ってます(全くうまくいっていないが…)。
 
パリ十八区で起きた爆破事件の犯人・ジョン(またはジャン)が出頭した。自分が犯人だという証明のために領収書を持参するなど、不可解な行動が目立つ。ジョンの要求は、自分と母親の釈放だった。ジョンの母親ロージーはかつてジョンの恋人を撥ねて殺した罪を犯していたが、そうなるとジョンの要求が不可解だ。カミーユはジョンの真意を探り始める。
 
ジョンとロージーの関係性には肝が冷えた。ここまで子どもを手放そうとしない母親となるともう溺愛というより依存性、虐待のレベル。淋しいのは分からないでもないが…うーん、病んでる。ロージーの過去を洗うとますます異常性が高いし、これはもしかするとジョンの目的も理解の範疇なのかもしれない。そういうわけで結末は想像の範疇ではあった。中編だから仕方ないのだが、やはりいつもの長編に比べてあっさり、読み応えがない。これを長編で読めたら良作だったと思うので残念だ。