すべてが猫になる

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ヴァラエティ  (ねこ3.7匹)

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奥田英朗著。講談社文庫。

夫婦での帰省中、なぜか車にヒッチハイカーを乗せる妻。乗った男が失礼で腹を立てる夫だが、妻は今度は見知らぬ老婆を乗せて…(「ドライブ・イン・サマー」)。娘が外泊したいと言い出した。きっと彼氏とだ。母はどうするべきなのか(「セブンティーン」)ほか、微妙な空気を絶妙に描き出す、名手の貴重な作品集!(裏表紙引用)
 
奥田さんの寄せ集め短篇集。単行本にはなってるのかな?文庫だけ?
 
「おれは社長だ!」「毎度おおきに」
準大手広告代理店勤続10年の中井は、いよいよ独立することを決めた。最初はついてきてくれる部下を囲いツテでの大きな仕事も約束され順調に見えたが、次々と困難が襲う。
まあ、正直、私としては「きっとうまくいかない」と思って読んでいた。誰しもそう思うだろう。いきなり80万円の家賃のオフィスを借り、家具も新品で揃えた後に部下はトンズラ仕事はおじゃん。そりゃそうでしょ。今まで名刺1枚で上手くいってたのは会社の名前があったからだよ。芸能人だってなんだって全部そうじゃん。2人子どもがいて奥さん気の毒すぎる。。と思っていたが、中井が中途半端に仕事の出来る男だし性格も父親として難はあれそんなに悪いわけではないので次第に応援する気持ちになってきた。悪徳?社長の金子っていう「悪役」が出てきたからなおさら。スッキリ気持ちのいい終わり方ではないが、まあなんとかなるんじゃないかな。独立する人の何パーセントかはうまくいくわけだし。
 
「ドライブ・イン・サマー」
これは真面目に読んではいけない。妻の実家へ車で帰省中渋滞に巻き込まれた徳夫だが、妻が次々と不審な人物を乗せてしまう。失礼すぎるヒッチハイカー、バスツアーで置いてけぼりをくらった老婆、追突してきた家族の子ども2人、包丁を持った男…。とにかくイライラハラハラしっぱなし。有り得ないがホラーと思えばかなり笑えて面白いかも。
 
「住み込み可」
DV夫と借金から逃げ、熱海の旅館で働いている瑛子は同年代のわけあり女性・今日子のことが気にかかる。普段先輩の寿子に理不尽にいじめられても平気そうだし、食事は賄いを食べているはずが毎晩お弁当を買って帰っているようだ。
今日子の秘密には驚いたが、それよりも主人公の瑛子に問題あり。なんの解決にもなっていないのだが、そこはやはり瑛子のような性質の人間には元々問題があるってことかな。借金800万、実家に取り立てのビラとか明らか違法じゃん。夫も借金もどうにでも方法はあるはずなのに、世間を知らず真っ当に生きられない人間というものの怖さを見た。
 
「セブンティーン」
44歳の主婦・由美子の娘・明菜がクリスマスイブに外泊したいと言ってきた。友人のところに泊まるというが、実は彼氏の家に泊まろうとしていることはバレバレだ。正面切ってダメだと言えない由美子だが…。
今時の17歳なんてこんなもんなのかね?個人的にはまだ早いと思うが。娘がいたらこういう心配もしなきゃいけないんだなあ。嫌われたくないし、かと言って応援もできないし、夫は頼りないし。由美子が電話で取った行動が正しいかはわからんが、明菜にはできればこの時点で気づいて欲しかったな。まあ、自分もそうだけど、母親のありがたみや愛情って大人にならないと分からないかもしれない。
 
「夏のアルバム」
小学生の雅夫は自転車に補助輪なしでまだ乗れない。友人の自転車を借りて日々特訓するが一向にうまくならず…。
これはまあ、良くも悪くも。まだ現実を把握できない、でも記憶には残る小学生のよくある思い出って感じ。私は補助輪を外して母に自転車の後ろを持ってもらって漕いで、しばらくしたら後ろから母が「おお、乗れた乗れた!」って言うのよ。見たら母がいつの間にか手を離してたのよね~。ええっ?ってなってそこで足着いたけど。それから乗れるようになったんだっけな。それが私の自転車補助輪なしデビューの思い出。
 
 
以上。実はこのほかにも対談が2つとショートショートが1つ収録されてるんだけど、対談は興味がないので飛ばしました^^;ショートショートはサッカーの話でよくわからない。
統一性はないけど、奥田さんらしい軽い読み物ばかり。サクっと読むにはいいかな。奥田さんを初めて読むという人には薦めないけど。。