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東京會舘とわたし  (ねこ3.9匹)

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辻村深月著。文春文庫。

大正十一年、社交の殿堂として丸の内に創業。東京會舘は訪れる客や従業員に寄り添いつつ、その人の数だけ物語を紡いできた。記憶に残る戦前のクラシック演奏会、戦中の結婚披露宴、戦後に誕生したオリジナルカクテル、クッキングスクールの開校―。震災や空襲、GHQの接収など荒波を経て、激動の昭和を見続けた建物の物語。(裏表紙引用)
 
東京會舘の100年の歴史を、東京會舘に思いを寄せる人々の数々のエピソードと共に描かれる大長編。上巻に「旧館」下巻に「新館」という副題が付いている。上巻が大正~昭和、下巻が平成という感じかな。私恥ずかしながら東京會舘というものを全く知らなかったのだが、この本を読んで外観くらいは見てみたいなあと思った。どのエピソードも東京會舘のスタッフとお客との素敵な物語で、どれもとても良かったと思う。特に製菓「パピヨン」は大人のお菓子ということで読むたびによだれが出そうだったな。自分もお土産に買っちゃうかもしれない(自分用に)。
 
特に好きだったのはやはり下巻以降で、亡くなった夫とレストランで金環を祝うお話は、スタッフの粋な計らいに思わず涙が出た。こういうの、自分なら絶対思いつかないや。クッキングスクールのお話も好き。正直読んでいて「玉ねぎ40分も家で炒めてられるか!」とか「そんな食材スーパーにあるか!」と思わないこともなかったのだが、料理を生涯の趣味(の域を超えてる)とする人々が東京會舘のお料理を極め愛する家族に食べさせたいと思う気持ちは伝わってきた。講師のあり方も魅力的だったなあ。あと、辻村さんご自身の体験を反映させたと思われる直木賞のお話は外せないね。主人公の小椋は男性だしもちろんフィクションなわけだけど、辻村さんが実際直木賞を受賞された時のエピソードや思いはかなり作中に現れていると思う。
 
私自身はあまりこういうマナーの必要な場や本物のなんちゃらみたいなものに興味はないので行ってみたいとまではならなかったが、辻村さんの筆力ですいすい読ませられた。どの人物も魅力的で人間味に溢れていて、建物の内装や雰囲気も十分に味わえる。この作品で東京會舘に魅せられる人は多いと思う。