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dele3  (ねこ3.8匹)

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本多孝好著。角川文庫。

故人より託されたデータを極秘に削除する会社『dele.LIFE』。その所長、坂上圭司が姿を消した。真柴祐太郎はかつての雇い主を捜し始めるが、手がかりと思しきファイルは得体の知れぬ陰謀へと繋がっていき―(「リターン・ジャーニー」)。誰からも愛された女子中学生が自殺した。彼女の死と、遺されたデータの謎に迫る「スタンド・アローン」を含む全2篇。データに込められた秘密や想いが胸を震わすミステリ、待望の第3弾。(裏表紙引用)
 
「dele」待望の続編、シリーズ第3弾~。
 
2がああいう展開だったから、もう続編は出ないかもしれないと思っていたので嬉しい。描くなら話題になってる今だよね。
 
リターン・ジャーニー」
新たな事務所で遺品整理などの仕事を始めた祐太郎のところへ、圭司の姉・舞が訪ねて来た。dele.LIFEの事務所に残された圭司のパソコンのパスワードを考えて欲しいと言う。引き受けた祐太郎は、過去の依頼人・中学生のナナミと共にこの謎に挑む。
官公庁だの国家だの、いきなり世界観が壮大になって思わず引いてしまった。圭司の元上司の夏目の正体があまりにもミステリアスで大きすぎる。が、祐太郎と圭司のやり取りも相変わらずだし、アクションも派手で楽しめる。何よりナナミちゃんが凄い活躍したねえ。この子がいなかったら無理だったろうな。事件は解決したようなしてないような尻すぼみな感じ。でもまあ、復活したからいいか。
 
「スタンド・アローン」
中学生のユイから依頼が舞い込んだ。しかしユイは既に自殺、依頼は親のカードを無断で使用してのものだった。未成年とは契約しないという方針から圭司は返金しようとするが、ナナミと祐太郎は反対。2人でユイの通っていた学校へ聞き込みを始めるが。。
こちらは今までのdeleらしい作品。この年代の子なら当たり前に持っている心の闇や鬱屈。とても優しく人気があったというユイの本当の姿に胸が痛くなった。とても10代の子が処理できる問題ではなかったが、死ぬことはなかった。ユイが死ぬ前に圭司と出会っていたら阻止出来ただろう、自分もそう思う。
 
 
以上。中編が2作かな。少し1編目は雰囲気違うところもあるけれど、ファンなら概ね楽しめる内容かなと。祐太郎にしても圭司にしても大きな過去(現在)を背負っているので底抜けに明るい物語ではないが、これから2人は少しでもいい方向に進んで行けたらいいなと思う。