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虚構推理 スリーピング・マーダー  (ねこ4匹)

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城平京著。講談社タイガ

「二十三年前、私は妖狐と取引し、妻を殺してもらったのだよ」妖怪と人間の調停役として怪異事件を解決してきた岩永琴子は、大富豪の老人に告白される。彼の依頼は親族に自身が殺人犯であると認めさせること。だが妖狐の力を借りた老人にはアリバイが!琴子はいかにして、妖怪の存在を伏せたまま、富豪一族に嘘の真実を推理させるのか!?虚実が反転する衝撃ミステリ最新長編!(裏表紙引用)
 
虚構推理シリーズ第3弾。このタイトル、クリスティーファンの心くすぐるね。
 
今回は短篇集のような長編。前半は「岩永琴子は高校生だった」という、琴子が高校一年の時にミス研に入った経緯とそこで解決した謎について。次は「立花ふたたび」という題で、居なくなった立花があるアパートに潜伏している姿が描かれる。3人連続自殺者を出した部屋に住む立花、突然また行方をくらました立花。遅れて訪ねてきた琴子と九郎がその部屋の怪異の謎を解くお話。
 
そしてここからが表題作「スリーピング・マーダー」のプロローグなのかな。「明日のために」では、ミス研部長天知の伯父にあたる藤沼が、天知に琴子の情報を教わろうとする不穏なお話。ここでも高校時代の琴子の活躍が披露される。
 
メインのお話は前後編に分かれていて、虚構ながらも遺産相続にまつわる真相探しという本格推理が展開されて読み応え抜群。怪異と絡んでいるのが真相なのだけど、いかにそれを排除して人間の納得のいく真相に持っていけるかっていうかなり高度なミステリー。罪を償うつもりが、また新たな犯罪が暴かれるっていうのが虚しい。琴子の出した答えは凄く真っ当で、信念に沿ったものだと思う。
 
しかし九郎の琴子への扱いは酷いもんだが(顔をわしづかみ、頭を本気で殴るなど)、結構大事に想っているんだねえ。2人とも噛み合っていないだけで。お似合いだと思うな。随所に差し込まれる琴子の下ネタだけはどうにかならんのか。。この2人、男女逆だったら結構えぐい。