すべてが猫になる

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ヒッキーヒッキーシェイク  (ねこ3.7匹)

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津原泰水著。ハヤカワ文庫JA

「人間創りに参加してほしい。不気味の谷を越えたい」ヒキコモリ支援センター代表のカウンセラーJJは、パセリ、セージ、ローズマリー、タイムという、年齢性別さまざまな4人の引きこもりを連携させ、あるプロジェクトを始動する。疑心に駆られながらも外界と関わろうとする4人だったが、プロジェクトは予想もしない展開を見せる。果たしてJJの目的は金か、悪意か、それとも?現代最高の小説家による新たな傑作。(裏表紙引用)
 
本が好きな方なら、津原さんと幻冬舎さんとのあの騒動はまだ記憶に新しいだろう。帯にある編集者塩澤氏による「この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます」。少々乱暴とも思えるこのインパクト満点の惹句に津原文学への強い思い入れを感じ、堂々と乗せられた私は購入した。小説に対する好悪は人それぞれとして、実に立派な態度だと思う。まあ、これだけ話題になったら売れるだろうから安心していい。
 
前置きはさておき、内容。
この物語の主役となっているのはヒキコモリ支援センター代表のカウンセラー、竺原丈吉(JJ)であるが、真の主役は登場するヒキコモリたちである。パセリ、セージ、タイム、ローズマリーというHNの彼らは全員事情も年齢も性格も特技も違う。その彼らがJJの引き合わせによりネット上一堂に会し、「不気味の谷を越えよう」というのが物語の主旨。
 
目的は一貫していないし、謎のハッカージェリーフィッシュが登場してから物語は破綻していくのだが…。人間と見紛うCG、故意に作成したウイルスなど、やっていることは不可解ながらも不思議と嫌な気はしない。清々しい彼らの門出、「続けろ!」という強めの幕引きにも、笑ってしまうほどの生命力が漲っていた。不条理な世界観の中にも現実に即した独自の目線があるのもいい。ヒキコモリを津原さんが描くとこうなる。