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ニャン氏の事件簿  (ねこ3.7匹)

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松尾由美著。創元推理文庫

アルバイトをしながら、自分を見つめ直している佐多くんは、あるお屋敷で、突然やってきた一匹の猫とその秘書だという男に出会う。実業家のA・ニャンと紹介されたその猫が、過去に屋敷で起こった変死事件を解き明かす?!って、ニャーニャー鳴くのを通訳しているようだが本当?次々と不思議な出来事とニャン氏に出くわす青年の姿を描いた連作ミステリ。文庫オリジナルだニャ。(裏表紙引用)
 
なにこれ面白い。
 
松尾さん読むの久しぶり。今こういうの描くのねえ。猫好きとしてはスルー出来ないタイトルだったので読んでみたけど期待を超えたかな。
 
主人公は大学休学中の派遣アルバイト、佐多。彼の職場や行く先々で必ず出会うのは猫のニャン氏とその秘書丸山。ニャン氏の本名アロイシャス・ニャンは実業家で、童話作家でもある。猫語を解する丸山氏に通訳をさせ、事件を推理し解決していく凄い頭脳の持ち主……って、何書いてんだわたし。
 
面白いな~と思ったのは、どの登場人物もニャン氏のことを疑問に思わない、受け入れてしまうところ。全員が全員そうだったらツッコミどころ満載だけど、主人公佐多だけは心の中でツッコミまくっているという。これが触媒となっていて笑えるんだろうな。
ニャン氏の通訳のときだけ真顔で語尾に「ニャ」を付ける丸山イカす…。実は丸山さんが推理してるんじゃないの?と思うこともしばしば。たまにメイドの来栖や佐多も推理をする。執事やメイド、動物が推理をするっていうのは斬新ではないかもしれないけど、設定が絶妙なので新しく感じる。
 
それに対して、ミステリー的には「今さらそれ?」というトリックがチラホラ。あと主人公の佐多にあまり魅力がなかったかな。元カノに「気概が感じられない」とか求めるものが高度だな~って思うし、その割に自分は恵まれた環境にいながら子どもっぽい反抗してるもんなあ。で、結局やるんかい。わたしとしては、ニャン氏の申し出の方を受けて欲しかった。続編出てるの知ってるから、そのほうが話が膨らんだんじゃないかなあと思ったんだけど。すぐ次も読もう(気に入ってる)。