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数字を一つ思い浮かべろ/Think of a Number  (ねこ4.2匹)

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ジョン・ヴァードン著。浜野アキオ訳。文春文庫。

数字を一つ思い浮かべろ。その奇妙な封書にはそう記されていた。658という数字を思い浮かべた男が同封されていた封筒を開くと、そこにあった数字は「658」!数々の難事件を解決してきた退職刑事に持ち込まれた怪事は、手品めいた謎と奇怪な暗示に彩られた連続殺人に発展する。眩惑的な奇術趣味と謎解きの興趣あふれる華麗なミステリ。(裏表紙引用)
 
2019「本格ミステリ・ベスト10」第4位、2018「週刊文春ミステリーベスト10」第7位、2019「このミステリーがすごい!」第9位作品。
 
うん、気に入った。個人的にはもっと順位が上でもおかしくないと思うのだが。
 
主人公はニューヨーク市警退職刑事のデイヴ・ガーニー47歳。バツイチで前妻との間に息子が1人。現在の妻マデリンとの間には子どもはいない。とにかく仕事人間で、退職してからもあまりのその能力の高さから、事件の顧問アナリストとして招かれるほど。しかしマデリンはそれを快く思っていない。
ある日元クラスメイトのメレリーから25年ぶりに連絡があり、奇妙な脅迫状が届いたので相談に乗って欲しいと懇願される。メレリーが受け取った手紙には「運命を信じるか?お前の秘密をいかに知り尽くしているか。証明のために1000までの数字を思い浮かべろ」などと書かれていた。思い浮かべた数字658を見事当てられたメレリーはビビリまくり、要求された手間賃286.87ドルを小切手で送ってしまう。。というお話。
 
少々文体が硬くまどろっこしいところもあったが、メレリーが残酷な方法で殺害されてしまったり、警察内部での確執があったり、マデリンと修復不可能なぐらい衝突してしまったりと読ませる内容。数字をどうやって当てられたのかが最大の謎だと思うが、逆の足跡のトリックと合わせてなかなか驚かされた。ここまでするか。オカルト的な内容じゃなく、こうやれば当てられるのかという事実に思わず納得。足跡トリックについては前例があったようだが。。私は知らなかったので「すごい!かしこい!」と思ってしまった。殺人事件が次々と連続して起こるので、やればやるほど証拠を残しやすいものだなあとちょっと犯人に同情。犯行動機は身勝手なものだが、境遇については気の毒に思う面も。
 
シリーズものとして読むにはキャラクターも個性的だしそれぞれに人生の背景があるしイイかも。続きをぜひ訳していただきたいな。文春系のサスペンス小説が好きな人は気に入ると思う。