すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

ノッキンオン・ロックドドア  (ねこ3.8匹)

f:id:yukiaya1031jp:20190408160742j:plain

青崎有吾著。徳間文庫。

 

密室、容疑者全員アリバイ持ち―「不可能」犯罪を専門に捜査する巻き毛の男、御殿場倒理。ダイイングメッセージ、奇妙な遺留品―「不可解」な事件の解明を得意とするスーツの男、片無氷雨。相棒だけどライバル(?)なふたりが経営する探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」には、今日も珍妙な依頼が舞い込む…。新時代の本格ミステリ作家が贈るダブル探偵物語、開幕!(裏表紙引用)
 
タイトルを見てL⇔Rを連想した人は同世代。
 
青崎さんにハズレはない、という根拠のない信頼からこれも期待して読んだがやはり裏切られなかった。短編集、ライトノベルという形態に多少戸惑ったものの。でも文体は今までと変わりないと思う。
 
「不可能」犯罪専門、トリックを暴くのが得意な倒理(悪魔のような巻き毛)と、「不可解」犯罪専門、動機から事件を推理するのが得意な氷雨(地味な眼鏡)。正反対のキャラクター同士がそれぞれ衝突し合い高め合い、探偵事務所を盛り立てていく。それぞれの事件は小規模でページ数は少ないが、やはりと言うかレベルは高い。
 
このダブル探偵と関わる登場人物たちが一巻目からしてやたらと多い。元同じ大学で今は警部補の穿地決(うがち・きまり)は男言葉で辛口。事務所の高校生アルバイト・薬子ちゃんはピュアで天然。仲介屋の神保は事件を見つけてくるなくてはならない存在。そしてラスボス的に重要なのが、2人の同窓生で犯罪制作家?の謎キャラ「チープ・トリック」。この存在1人だけでかなり物語に奥行きが出たんじゃないかな。なぜかつての同窓生たちは片や探偵、片や警察、片や犯罪者になってしまったのか。続編ありきでワクワクさせるね。
 
ただ、個人的に、この探偵2人はタイプではなかった。作中で2人を同じ風呂に入れたりBL狙いなのは分かるんだけど、うーん。倒理はもっと破天荒でもいいし、氷雨はもっと繊細だと良かった。正直、時々どっちが語り手か分からなくなったりしたので。言葉使いは描き分けられているので、単なるこっちの入り込み方の問題。