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夏、19歳の肖像  (ねこ3.7匹)

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島田荘司著。文春文庫。

オートバイ事故で入院中の青年が病室の窓から、双眼鏡で目撃した「谷間の家」の恐るべき光景。父親を刺殺し、遺体を工事現場に埋める美しい女性―しかし、青年は彼女に恋をしてしまった。スリリングな推理性と良質のサスペンス溢れる長篇青春小説。本格ミステリーの異才が描く直木賞候補の注目作。(裏表紙引用)
20.9.19投稿。
 
島田さんのノンシリーズ。70年代のお話。200数ページの短い小説で、すぐに読めてしまった。
 
バイク事故で入院していた19歳の男が、毎日窓から見えるビルの谷間の家を観察しているうち、その家の娘が父親らしき男に暴力を受けているのを目撃。さらに娘が翌日、工事現場に遺体らしき袋を埋める姿を見てしまう。しかし男は通報しなかった。なぜなら、彼はその美しい娘に恋をしてしまったからだ…。
 
このあと娘に接近し、殺人の謎を暴くというストーリーなのかと思ったら、ちょっと違った。男の純愛ラブストーリーといったほうが近いかも。ストーカーばりに彼女のことを調べ、あとをつけ、彼女の勤める会社にアルバイトで潜入するあたり今なら大問題になりそうだ。猥褻行為もしてるし。でもこういうのが許される時代だったんだなと思って読むと、男の純粋でひたむきな気持ちにこちらの胸まで熱くなる。(向こう側が受け入れてるからおけ)もちろん悲しい結末が待ってそうな予感はあるんだけど…思っていたよりかなり斜め上の真相だった。これはもう、誰にでもあるかもしれない若かりし頃の甘酸っぱい思い出だよね。これほど熱く誰かのために行動することなんて若い頃の特権というか。いい人生経験だったと思う。それにしても娘の母親気持ち悪かったな。。