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七年目の脅迫状  (ねこ3.8匹)

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岡嶋二人著。講談社文庫。

中央競馬会に脅迫状が届いた。「10月2日、中山第10レースの1番の馬を勝たせよ。この要求を受け入れなかった場合には……」最初に2億円のサラブレッドが、治療法のない伝貧(馬伝染性貧血)の犠牲になった。密命を帯びた中央競馬会保安課員・八坂心太郎が北海道へ飛ぶ。本格推理の新星・岡嶋二人の長編会心作。(裏表紙引用)
 
20/7/25読了。

ウチの近所の図書館は小学校内設なのでしばらく行く気がしない。今度は家にある岡嶋さんの読みこぼしを色々と。少ないけどね。83年の作品ということでまあ本もボロボロだし今更なあ、という気持ちも無きにしも非ずだったが、いやいや今読んでも十分面白い、むしろミステリーのお手本のようなしっかりとした作品だった。本書は「競馬三部作」の二作目らしい。一、三作目は読んでいるはずだが内容は銀河の彼方。。まあ問題なかったけど。競馬に興味が全くなくてもサラリと読めるような内容なので安心。知ってた方が倍理解できるんだろうが。
 
主人公は中央競馬会保安課員の八坂心太郎(シンパパ)。八坂は競馬会理事の義父の頼みもあって、競馬会脅迫事件の捜査をすることになった。内容は「10月2日の中山第10レースの1番の馬を勝たせろ」というもので、要求を無視したら馬に伝貧ウイルスを接種するというのだ。最初はイタズラだと思い無視していた競馬会だが、二通目三通目の脅迫状が届き、次々と馬がウイルスの犠牲になってゆく。これは本当に金目当ての犯行なのか?七年前、北海道の牧場の馬が連続してウイルスにかかった事件との関連は?
 
最近だとなかなかないと思うのだが、本作は完全なワンシチュエーションミステリーながら真相を二転三転させ、意外性のある犯人と犯行動機で飽きさせない展開に作られている。登場人物や牧場が多く、過去の事件との絡みもあるので若干ややこしいものの、保険証書偽造、疑惑の獣医、逃げた助手、謎の女、保険会社社員、タクシー運転手などが犯した犯罪や行動が全て繋がるので爽快。なんか全員お金と保身ばかりでうんざり。馬が可哀想だろ馬が。そんな中、八坂の可愛い娘とのやりとりや保険会社員であり見合いの相手でもある佳都子とのラブストーリー(笑いそうになるくらい古臭いけど)がほっこりさせる。まあ、古臭いのよ?古臭いのだけど、今とは違う捜査方法が(当時のほうが楽だな、と思える要素もあるが。個人情報ダダ漏れとか)、足と頭脳の原始的ミステリーの面白さを思い出させるんだなーと。