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グラスホッパー (ねこ4.2匹)

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伊坂幸太郎著。角川文庫。

「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。 どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。 鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。 それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。 疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説!(裏表紙引用)
22.3.24再読書き直し。
 
文庫で再読。
悪人ばかり出てくる小説だったよなあ、あまり自分は評価してなかったけど面白かったような。。というぐらいの記憶だけがあった。当時と今でそれほど心境の変化はなく、今言った通りのあほっぽい感触だけが残った気がする。そもそも悪人が主人公の小説は苦手なので、そこは昔から変わっていないのである。伊坂作品では避けて通れないのだが。。その中でも、比与子という悪女の存在が強烈に不快だったもので。
 
しかし疾走感、先の読めなさ、全ての登場人物が最後一堂に会する最終章、思わせぶりな台詞や小道具が最後に繋がる快感はこの作品が1番ではないだろうか(ここまで再読してきた中で)。伊坂氏のテクニックが上がってきているということなのだろう。
 
一般人ながら妻を殺された復讐のために非合法的な会社の契約社員となった鈴木→妻の仇を殺した「押し屋」を追う、自殺させ屋の鯨→政治家に命を狙われる、殺し屋の蝉→押し屋を追う、抜け出せないループのように話は進んでいくが、すべてのキーマンとなっている槿がどう動くかで物語が大きく変わっていくのが面白い。悪人は悪人らしく、どこか罪悪感を感じながら、闇に手を染めた善人はそれを悔いながら、やったことのツケは必ず払わされる。そういう意味での爽快さなら確かにあった。残念ながら「グラスホッパー」にピンと来なかったのと、ラストシーンの意味付けがうまく出来なかった。