すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

カササギ殺人事件/Magpie Murders  (ねこ4.3匹)

イメージ 1イメージ 2

 

アンソニーホロヴィッツ著。山田蘭訳。創元推理文庫

 

【年末ミステリランキングを全制覇して4冠達成! ミステリを愛するすべての人々に捧げる驚異の傑作】
『このミステリーがすごい! 2019年版』第1位
『週刊文春ミステリーベスト10 2018』第1位
『ミステリが読みたい! 2019年版』第1位
『2019本格ミステリ・ベスト10』第1位

1955年7月、サマセット州にあるパイ屋敷の家政婦の葬儀が、しめやかに執りおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは…。その死は、小さな村の人間関係に少しずつひびを入れていく。余命わずかな名探偵アティカス・ピュントの推理は―。アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ・ミステリ! (裏表紙引用)


アガサ・クリスティファン必読書というのがよくわかる。あらゆるところにクリスティ作品のオマージュが散りばめられていて、それだけでワクワクさせられた。

 

アラン・コンウェイという架空ベストセラー作家の最新作「カササギ殺人事件」を作中作とし、上巻はほぼその内容で締められる。どれぐらい締められるかというと、1946年に英国はサクスビー・オン・エイヴォン村で起きた家政婦転落死事件と準男爵マグナス・パイ殺害事件を難病の探偵アテュカス・ピントが犯人を名指しするところまでまるまる締められる。この作品だけでも探偵小説として読み応えたっぷりなのだが、下巻からアラン・コンウェイの担当編集者・スーザンを語り手とし、存在しない「解決編」を探す――という二重解決型のミステリに進化するのだ。しかもアラン・コンウェイが死亡してしまうのだから謎多きことこの上ない。

 

本編のアラン殺害(?)事件の謎解きは充分本格ミステリ好きを満足させるものだった。犯人の意外性はもちろん、その動機の刺激性は他に類を見ない。殺した時点で隠そうとした真実を上回る問題に発展することは子どもでも分かる気がするが、つくづく探偵小説の犯人というのは自信家だということだろうか。

 

作中作の謎解きもそれに比肩する出来。過去の犯罪が衝撃的に暴かれ、封筒の宛名が手書きかそうでないかという謎が明かされた時の爽快感と言ったら。

 

ロマンス要素も忘れていないところは特に「分かってる」作品だなあと感じた。4冠達成の称号は伊達じゃない。