すべてが猫になる

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友達以上探偵未満  (ねこ3.8匹)

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三重県立伊賀野高校の放送部に所属する伊賀ももと上野あおは大のミステリ好き。ある日、部活動で訪れた伊賀の里ミステリーツアーで事件に巻き込まれる。探偵に憧れる二人はこれ幸いと、ももの直感力とあおの論理力を活かし事件を解決していくが…?(「伊賀の里殺人事件」)。見立て殺人?お堀幽霊の謎?合宿中にも殺人事件…。勝てばホームズ。負ければワトソン。この世界に名探偵は二人も、いらない。女子高生探偵・ももとあおの絶対に負けられない推理勝負、開幕! (紹介文引用)

 

 

麻耶さんの新刊は、探偵を目指すキュートな女子高生コンビが織り成す難事件3篇を収録した短篇集。新シリーズ?

 

伊賀野高校放送部(なんでやねん)に所属する伊賀ももと上野あお。ももは忍者の末裔、俳句マニア(でも俳句は詠まないミステリも読まない)でいつも見当違いの推理をカンだけで披露するキャラ。明らかにワトスン役(笑)なのだが情熱だけは熱い。で、兄は伊賀署の刑事。あおは論理的で冷静キャラだが低血圧でいつも事件現場に遅刻するのだけが欠点。ももをワトスン役にしようと日々画策するが…という役どころ。

 

「伊賀の里殺人事件」
伊賀の里ミステリーツアーに取材で参加することになったももとあお。企画の趣旨で容疑者は全員芭蕉か忍者の扮装をしているところがトリックのミソ。衣装の色がそれぞれ違っていてややこしいので解決編は二度読み必須かも。俳句の見立てをした理由や人間関係の複雑さを紐解いて行けば自ずと犯人は解る。内容は下世話だけど計算力が必要で知的ではある。

 

「夢うつつ殺人事件」
伊賀野高校に伝わる怪談・「お堀幽霊」を利用した殺人事件。美術部の女子生徒が立ち聞きした不穏な殺人計画の真相とは。ブロンズ像がなぜ左手だったのかが分かれば真相に辿り着くのかな。こんな偶然ありかいな?という感じもあるが、この発想は私の読書人生で初めて触れるものだった。これも冒頭を読み直した方が理解は深まるね。やっぱり下世話。解決編みじかっ。

 

「夏の合宿殺人事件」
中学生時代のももとあおの出会い、そしてコンビとして初めて解決した事件が描かれる。ももの決め台詞「解ったり!」が生まれた記念すべき事件。あおがホームズと言っていい気もするけれど、これを読むと二人で一人の名コンビなのだなと実感。


本格ミステリとして読む分にはなかなかの秀作。ややこしさが際立つので生粋の本格ミステリ好きでないとキツいかも。あとはラノベ調の作風を受け入れられるかどうか。比喩やギャグがことごとくスベっているのも気になる。私はちょっと軽すぎて気に入ったとは言えないかな。嫌いでもないけど。女子高生探偵コンビってメフィスト賞作家でそういうシリーズ描いてる人いたなあと思って。麻耶さんだから最後の作品でなんかドスの効いたものが待っているのかなあと期待しちゃったのね。