すべてが猫になる

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淵の王  (ねこ4.4匹)

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中島さおりは“影”に憑依された幼児に襲いかかられる。堀江果歩のマンガには、描いた覚えがない黒髪の女が現れる。中村悟堂が移り住んだ西暁町の家の屋根裏部屋には、闇の穴が黒々と開いている。「俺は君を食べるし、今も食べてるよ」。真っ暗坊主―それはあなたの眼前にもきっと現れる。日常を浸食する魔、そして狂気。作家・舞城王太郎の集大成、恐ろしくて、切ない、傑作ホラー長篇。(裏表紙引用)

 


舞城さんのホラー長編。ホラーだと知らずに読み始めたので最初戸惑ったけど、相変わらずの舞城節で一気に読ませてくれる。内容は中島さおり、堀江果歩、中村悟堂の3部構成になっていて、それぞれに二人称の「語り手」が登場する。この語り手の正体の説明も何もないままそれぞれの物語が進行するので終始不思議な感じ。

 

中島さおりは元彼の杉田が今カノに暴力を振るっていることを知る。やがて彼女が妊娠、結婚。静観していたさおりだが、親友が杉田の子育て問題に巻き込まれていることを知り行動を起こす。

 

堀江果歩は高身長のテニス女子だったが、やがて人気マンガ家に。かつて痴漢傷害事件を起こした男の息子・広瀬と親しくなるがやがて広瀬の様子がおかしくなる。

 

中村悟堂は会計士。昔恋心を抱いていた斉藤さんは東京へ嫁ぐが、夫の浮気により離婚、やがて死産。元夫の浮気相手に呪われていることを知った悟堂は斉藤さんと自分の彼女の行方不明を解決するため地元福井に住み着くことに。


それぞれのお話に腸が煮えくり返るほど不快な人間が登場するあたりああ舞城作品だなあと実感する。吐き気がするほど気味の悪い現象がそれぞれに起こるが、最後には主人公の「愛」が全てを救う、というホラーながらも感動的な傑作。語り手(守護霊みたいなものかな??)もそれぞれの「主人」を違う形で見守り想っているのだが、これが読者目線ということでいいのかな。これほど絶望的状況なのに、最後にはスカッと爽快になれるって最高。やっぱり舞城作品はやめられない。