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フランクを始末するには/Milo and I (ねこ3.8匹)

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フランク・ヒューイットは芸能界の大スター。殺し屋の“わたし”は彼の殺害を依頼され…。二転三転するスター暗殺劇の意外な顛末を描いた英国推理作家協会短篇賞受賞作のほか、刑事の相棒に赤ん坊が採用され一緒に捜査を行う「マイロとおれ」、買いものリストだけで成り立つ異色作、ミステリ出版界の裏事情を語る一篇など多彩な12作。奇想とユーモアあふれる傑作短篇集。 (裏表紙引用)

 


読みたかった作品が手に入った。現在唯一の邦訳作品で、もちろん初読み作家。このアントニー・マンはオーストラリアの作家で、表題作は1999年に英国推理作家協会短篇賞を受賞している。これぐらいしか情報はないが、短篇の名手といった印象を受けた。それも、奇想系の。現代版異色作家短編集があればこの方を外さないで欲しい。なんせ、どの作品もなかなかに良かったのだ。少し作風がひねくれ気味でブラックユーモアに溢れまくっている(しかもチェスのお話がやたら多い)ため、好みは分かれるかもしれないが。イマイチわからなかった数篇以外のほとんどを簡単にご紹介。

 

「マイロとおれ」
原題のほうの表題作ですな。ハードボイルド調の、赤ん坊と刑事が殺人現場に臨み事件を解決するというふざけたミステリー。設定がすでにやり過ぎなため、さらっと事件解決。これ、シリーズ化してほしい。

 

「緑」
ある町では、雑草一つ生えているだけでも眉をひそめられ、どの庭の植物も綺麗に剪定されている。それに悶々と鬱屈した感情を抱いていた青年は――というお話。これは物語として成立しているのか?と疑問に思いながら読むが、オチが爽快。

 

エディプス・コンプレックスの変種」
チェスの実力をあげたいと思うのなら、自分の父親を憎め、殺せ――というとんでもないお話。もう読んでいて父親が気の毒でいたたまれない。が、思わぬどんでん返し。しかし、ラストのオチの意味がわからなかったのは痛い。検索してそれが何の名称かわかったが。

 

「豚」
ある夫婦がある夫婦の家に招待されると、汚い身なりの少年と豚がいて――。ちょっとした趣味の悪いホラー風味。

 

「買いもの」
牛乳
新聞
サンドイッチ
ガム
バナナ
キャットフード

 

このように、レシートだけで成立させた小説。コワイコワイコワイ!!!( ゚Д゚)この人一体ナニしたんだ。。。

 

エスター・ゴードン・フラムリンガム」
売れない小説家が、売れている小説家の逝去後代役候補にあげられ――というお話。どんな設定、職業の作家を思いついても、全世界のどこかの探偵とキャラが被ってしまうという会話が面白かった。

 

「フランクを始末するには」
特集記事や映像を組み儲けるために、なかなか死なない有名人のフランクを始末することになった。その実行を引き受けた主人公は思わぬ罠にはまり――。ほとんどコメディばりの突っ込みどころの多さだが、軽快で胸がすく結末。

 

「ビリーとカッターとキャデラック」
太りすぎのカッターは、キャデラックを賭けて減量を目指すが、誰も彼の勝ちを信じていなかった――。結末までがじれったく長い。太っている方が痩せやすいんじゃないのか、とかビールやめりゃ勝てるやん、とか考えてた自分。現れたカッターはなんと・・・。ヒィィィィ(゚д゚)!ヤメロー!


「万事順調(いまのところは)」は借金が絡むお話だが面白味がわからず。「契約」も説明不足なのかなんなのか。「プレストンの戦法」はチェスの名人の悲劇を。「凶弾に倒れて」は父親を異常者に殺された男が主人公だが、刑期を終えて出てきた犯人はテレビスターになって。。というお話。結末に想像の余地をあまりにも与えすぎたような。

 

解説も全然解説になっていなくて、わざとかというぐらいアントニー・マン風味。SF作家に近いような。これは面白いものばかりを集めたのか、これがアベレージなのか。次作も短篇集でぜひ!