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名探偵 木更津悠也 (ねこ3.8匹)

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麻耶雄嵩著。光文社文庫

資産家・戸梶康和が自宅の洋館で刺殺された。財産相続がからんでいるものの、遺族たちには、それぞれ完璧なアリバイがある。被害者の甥・彰敏が証言した幽霊の目撃談。そこから名探偵・木更津悠也が導きだした犯人とは―!?(「白幽霊」)白い幽霊の出没に連動して事件が起こる4編で、名探偵・木更津悠也と助手役・香月実朝が名コンビぶりを発揮する。(裏表紙引用)
21.5.20再読書き直し。
 
初読であまりにも低評価だったので驚いた。木更津があまり好きではなかったのもあるが、各事件の動機や犯人像、オカルトの部分がどうも気に入らなかったらしい。今の自分でも「ん?」と思うので、当時の記事がすべて不当な評価だったとは思わないが…。
 
「白幽霊」
資産家の主人が自宅で刺殺された。依頼にやって来た被害者の長男の妻は家族に疑われているようだが…。証言というものの真実。ちょっとズルい気も。。なかなかに後味の悪い結末。
 
「禁区」
白幽霊の正体は、半年前行方不明になった友人ではないかと考えた高校生5人組が調査を開始すると、1人の女生徒が幽霊に取り憑かれたらしい。やがてそのうちの1人が文芸部部室で殺害されるが…。芝居の再現が読みどころ。これも後味が悪い。動機もアホっぽい。が、木更津の信念はいいと思う。香月がいちいち木更津のことをカッコイイ!と心で褒めるくだりがこそばゆい。。
 
「交換殺人」
酔った勢いで、バーで知り合った男と交換殺人の約束をした男。冗談のつもりだったが、男がターゲットとしていた人物が殺害されてしまった。男に自分の仕業だと思われたら、自分がターゲットとして選んでいた妻を殺されてしまう…。
設定が面白いね。一人目の被害者の動機どうかと思うけど、なぜ名作のあっちは良くてこっちはダメなんだってなるよね。まあ、何でも最初にやった人だけが偉い。犯人に意外性があって面白かったが。
 
「時間外返却」
鉄道展望ビデオに写っていた白幽霊。マニアがその現場を探すと、実際の女性の白骨死体が発見された。行方不明になってから1年が経過しており、女性の父親が依頼に現れたが…。容疑者が多くて楽しめる。ビデオの返却をなぜしたのか?が納得のいくものだった。ただ、犯人像がちょっとムリがある気がする。。まあ、絶対ないとは言い切れないが。
 
以上。
一つ一つの短編はそれなりに面白いが、この作品のキモは木更津というよりワトスン役香月の存在だろう。見方によっては不気味ですらある。本当の名探偵は香月なのかもしれないが、思いついてもそれをどう活かすか、が本当の探偵とは決定的に違うということなのだろう。だからワトスン役なのだ。しかし香月ってこんなキャラだったかなあ。。