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チルドレン  (ねこ4.6匹)

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伊坂幸太郎著。講談社

こういう奇跡もあるんじゃないか? まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。 吉川英治文学新人賞作家、会心の受賞第1作! (紹介文引用)
 
22.3.22再読書き直し。
 
短篇集のふりをした長篇小説、というキャッチコピーが売りの作品。
家裁調査官でバンドマンの陣内初登場作。彼が調査官になってからとなる前の破天荒な性格、遭遇した事件が友人の鴨居や盲目の永瀬、恋人の優子らとの交流をベースに描かれていく。銀行強盗に遭ったり、保護観察中の少年にしてやられたり、失恋して周りの時間を止めたり。それぞれに提示される不思議があって、最後には陣内の目で見た真相や陣内の人となりを通して見えた真実が明らかになる。家裁調査官が起こすそれぞれの奇跡。気に入っているのはいつまでも忘れられないラストシーン「チルドレンⅡ」。最後の台詞だけで少年が更生する未来が見える、天才的な表現だと思う。同じく好きなシーンは陣内が盲目の永瀬が善意の第三者から五千円をもらったことに憤慨し、「なんでお前だけなんだよ、ずるい」と言ったところ。視点を変えるだけで人生が少しだけ良くなる気がする。