佐藤友哉著。講談社ノベルス。第21回受賞作。
妹が首を吊った、とイカレた母親からの電話。愉快そうな侵入者は、妹の凌辱ビデオを見せたうえ、レイプ魔たちの愛娘がどこにいるか教えてくれる。僕はスタンガンを手に捕獲を開始。でも街には77人の少女を餌食にした<突き刺しジャック>も徘徊していた――。世界を容赦なく切り裂くメフィスト賞受賞作!(裏表紙引用)
2014年4月再読。文庫化にあたり、かなり直しが入ってるらしいが大正解だ。あれほどヒドかった文章が記憶にある限りまともになっているのだから。
鏡家7兄弟の名前、生死なども復習になって良かったと思う。シリーズでは主人公だと認識している公彦がどれほど壊れ、狂った精神を持っているか、そして実際に行動したかを反芻する事も出来た。愛する妹が輪姦され、張本人たちには手が出せないからとその娘たちを誘拐、監禁し、さらには暴力を加える。そこへ狂った姉・稜子も介入しかき回していく。同時に、公彦の友人明日美はその予知能力で突き刺しジャックの犯罪を脳裏に焼き付けている。巻き込まれているのは主人公か、はたまた・・・。
終焉に向けてますます破綻していく物語だが、いかにも中二病を狙ったものだけではなく、そこに計算以上の息吹があることには驚きを禁じ得ない。まるでキャラクターが、物語が独り歩きをしていくような。破綻させながらも物語の締めを作り上げるセンスはさすが。ミステリーとしてではなく、何かが生まれる予感。ネーミングや引用に若さを感じるものの、そこに新しい文学の幕開けを見た。