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鎌倉うずまき案内所  (ねこ4匹)

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青山美智子著。宝島社文庫

古ぼけた時計店の地下にある「鎌倉うずまき案内所」。そこには、双子のおじいさんとなぜかアンモナイトが待っていて…。会社を辞めたい20代男子。ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親。結婚に悩む女性司書。孤立したくない中学生。40歳を過ぎた売れない脚本家。ひっそりと暮らす古書店の店主。平成を6年ごとにさかのぼりながら、悩める人びとが「気づくこと」でやさしく強くなる―。ほんの少しの奇跡の物語。(裏表紙引用)
 
最近お気に入りの青山さん、今回はこれ。
 
う~、これも良かった!ナイスうずまき!
平成の30年間を、時系列をバラバラに登場人物(語り手)を変えて様々な物語に仕上げている連作短篇集。鎌倉の町に突然現れる地下室、そこにはいつもオセロをしている双子のお爺さんが。一方は左巻、一方は右巻と名乗ってヘアスタイルと性格が真逆。迷いこんだ人に「はぐれましたか?」と声をかけ、生きているアンモナイトを所長と呼び占いめいた託宣を与える。お土産は不思議な力を持ったうずまきキャンディ。
 
これも前に読んだ「樹の下で」と同じく、託宣を受けた人びとがその言葉をヒントにこじれた人生を立て直していく内容。やりたい雑誌が作れず退職を考える青年、高校生の息子がユーチューバーになりたいと言い出した主婦、ピンと来ないが安定した結婚を前に悩む女性、学校ではみ出さないために自分を殺している女子高生、40を越え目が出ないままの舞台監督、古本屋を営む孤独な老人。それぞれ共通の登場人物が出てくるので、あの人があれからどうなった、とか実はこの人はあの人だった、とかが毎話明らかになるのが面白い。時系列順に読み返したくなるかも。最終話ではミステリっぽい仕掛けもあったりして遊び心もあり。ミステリというわけではないのだけど、青山さんの文章には伏線があっていつも最後に色々な言葉が効いてくるのが快感なんだなあ。そんなうまくいくかよ、と思ってしまう展開もあるにはあるのだけど、最後には必ず説得力が伴うのでほっこりスッキリできる。う~、「樹の下で」も相当良かったけれど、この作品も同じくらい好きだなあ。