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されど私の可愛い檸檬  (ねこ4.3匹)

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2ヵ月連続作品集刊行、2冊目家族篇。舞城王太郎が描く「家族」の愛、不思議、不条理。
姉の棚子は完全無欠。その正しさは伝染するようで、周りもみんないい人ばかり。でもそれって怖くない? 幸福の陰に潜む狂気を描く。「トロフィーワイフ」 妻からの突然の告白に僕は右往左往。幼い娘、無神経な義母、存在感の薄い義父。小さな家族の形が揺らぎだす。「ドナドナ不要論」 「やりたい」仕事ははっきりしてる。だけど何故かうまく「できない」。だって選ぶのって苦しいじゃないか?「されど私の可愛い檸檬」
問答無用で「大切」な家族との、厄介で愛おしいつながりを、引き受け生きる僕らの小説集。(裏表紙引用)

 


二ヶ月連続刊行作品の二冊目は三作収録の短編集。テーマは「家族」。


「トロフィーワイフ」
姉の離婚の危機を、気が進まないながらも救済する妹のお話。姉の持つ完璧さは、見られたい自分、理想とする自分を演じたものなのかどうか。演じ続けているならそれはもう自然体なのか。それはそれとして、旦那から逃げ出し寄生した先が5年没交渉だった友人(既婚、子持ち、両親と同居)宅ってどうよ。その非常識さを必死で説く妹。正論の応酬がとにかく凄い。


「ドナドナ不要論」
幸せだった夫が、妻の癌治療で共に闘うお話。奥さんが娘を虐待し始めたのって、副作用みたいなものなんだろうか?それぐらい異様だった。わざわざ悲しい歌を聴く必要がないという夫の持論が、最後感動的に繋がったので良かった。しかし娘ちゃん大丈夫かね?この年齢なら成長してもこの恐怖は記憶に残ると思うんだけど。

 

「されど私の可愛い檸檬
モテるが女性に本気になれない青年が急にデザイナーを目指すお話。この作品だけ「家族」のお話ではないような?いるいる、こういうなりたいものがあるって言いたいだけの口だけの人間。と思いながらも、職場で厳しくされたり彼女に追い詰められたりする姿を見て可哀想になってくる。決断は難しい。みんな自分の為を思って言ってくれているって考え方、なんて綺麗な世界なんだろう。


以上。

 

舞城作品の特徴は、登場人物たちが立て板に水と畳み掛け合う「口論」の凄さだと思う。私は言葉で相手をとことん追い込む、っていうの出来ないから余計に気持ちいいのかな。どの作品でもちょっと行き過ぎた人間関係や異常な人間を描いているけれど、そこから発する言葉たちは実は私たちの本音だったりするのかなって。ここにいるのが自分の半身だから、最後に愛が勝つことにこんなに感動するんだ。