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純平、考え直せ  (ねこ3.8匹)

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奥田英朗著。光文社。

 

坂本純平、21歳。新宿・歌舞伎町のチンピラにして人気者。心酔する気風のいい兄貴分の命令は何でも聞くし、しゃべり方の真似もする。女は苦手だが、困っている人はほうっておけない。そんな純平が組長から受けた指令、それは鉄砲玉(暗殺)。決行までの三日間、純平は自由時間を与えられ、羽を伸ばし、様々な人びとと出会う。その間、ふらちなことに、ネット掲示板では純平ネタで盛り上がる連中が…。約一年半ぶりの滑稽で哀しい最新作。 (裏表紙引用)

 

 

奥田さんにこんな作品があったの知らなかった、慌てて読了。

 

あんま面白くなさそうなタイトルだな~と思って読み始めた(失礼)が、のめり込んでスラスラスラっと一気に読めた。ヤクザの純平が親分の頼みでよその組の幹部を撃ち殺せと命令されるというなかなか凄い世界のお話なのだが、奥田作品のコミカルさがよく出ていて悲壮感がない。お笑いってわけじゃないんだけど、まあ、軽い?

 

純平のキャラクターが、なんだか応援したくなる感じなのが良かったのだと思う。若さゆえのいきがりちゃんだし直情型でダメダメな部分もいっぱいあるんだけど、実際見た目が良くてカッコつけてはいるから凄くモテるみたいだし。女性だけじゃなく、男性からもオカマからも純平ちゃん純平ちゃんと慕われてる。鉄砲玉になることが決まってから、たくさんのいい人と出会ってしまうから人生って分からないものだね。行きずりで遊んだカナ、元教授の占い師、よその組同士で盃を交わした兄弟分、優しいオカマゴローちゃん。みんな裏で生きているようなひとたちだけど、純平のことをほっとけないのがよく伝わる。でもこの作品は、人との出会いが純平の価値観を変えるっていう単純なものじゃない。迷いは生じるのだけど、芯が通っているとも言えるのかな。。読んでるコッチから見れば、ネット掲示板の皆さんと同じく「純平、考え直せ」という作者狙い通りの感想しか浮かばないのだけど。あ~あ、って感じ。実際、兄貴の北島ってほんとのどころどういう人だったんだろう。