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鬼談  (ねこ3.7匹)

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京極夏彦著。角川文庫。

 

藩の剣術指南役・桐生家に生まれた作之進には、右腕がない。元服の夜、父は厳かに言った。「お前の腕を斬ったのは儂だ」。一方、柔らかで幸福な家庭で暮らす“私”は何故か、弟を見ていると自分の中に真っ黒な何かが涌くのを感じていた。ある日、私は見てしまう。幼い弟の右腕を掴み、表情のない顔で見下ろす父を。過去と現在が奇妙に交錯する「鬼縁」ほか、情欲に囚われ“人と鬼”の狭間を漂う者たちを描いた、京極小説の神髄。(裏表紙引用)

 


京極さんの「~談」シリーズ。今回は「鬼」をテーマにした怪談集で、それぞれのタイトルに必ず「鬼」がついている。はっきりテーマを統一させたのは初じゃないかな。さすが京極怪談で、毎回違うお話で怖がらせてくれる。よくネタが尽きないなと。

 

どれもなかなか良かったが、鬼との性交を描いたと思わせる「鬼交」や実の父に右腕を斬られた子の歪んだ心がまさに鬼な「鬼縁」、雨月物語を元にした?「鬼情」、クズ男にふさわしい死に様「鬼慕」などなど、ラスト1ページで恐怖が正体を現すスタイルが面白かった。サラっと読むと普通の怪談だけど、真相を知ってから読むとまた悪趣味な楽しみ方が出来そう。