すべてが猫になる

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スペードの3  (ねこ3.8匹)

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有名劇団のかつてのスター“つかさ様”のファンクラブ「ファミリア」を束ねる美知代。ところがある時、ファミリアの均衡を乱す者が現れる。つかさ様似の華やかな彼女は昔の同級生。なぜ。過去が呼び出され、思いがけない現実が押し寄せる。息詰まる今を乗り越える切り札はどこに。屈折と希望を描いた連作集。 (裏表紙引用)

 

 

朝井さん二冊目。「何者」が良かったので。この本は特に話題になっていたとか評判を見て、とかではなく、本屋で手に取って面白そうだと思ったので挑戦。

 

本書はヒロインを3人替えての3部構成の連作集になっていて、まずは舞台女優・虹北つかさのファンクラブ「ファミリア」を取り仕切る美知代の章、続いて美知代の小学生時代のクラスメートむつ美の章、そしてつかさの章に分かれる。

 

有名化粧品メーカーの社員だと嘘をついたり、自分より上か下かを無意識に判断したりという感情の奥にあるものを上手く表現できていると思う。とは言え自分自身に思い当たる感情や過去がないためか、ものすごく内容に共感したわけではない(それを言うと「何者」も自分に重なるところは別になかった)。どうやらこういう、「人と比べる」という感覚が私には昔からないようだ。その分、この作家さんにはのぞき見の面白さみたいなものを感じる。小学校の学級委員のまま大人になった美知代、コンプレックスを跳ね返したものの、美知代のレベルに追いついただけな気がするむつ美、自分にはスターとして物語となる不幸やエピソードがないと悩むつかさ。自分の気持ちや努力次第でどうにでもなるもどかしさが絶妙。

 

読破しようかな。