恒川光太郎著。角川文庫。
路上のくじ引きで一等賞を当てた斉藤夕月。異世界に飛ばされ、10の願いを叶えられる「スタープレイヤー」に選ばれたと聞かされる。その使い道を考えるうちに目の当たりにするのは、自らの暗い欲望、人の抱える業の深さ、祈りの尊さ…。折しもマキオと名乗る別のスタープレイヤーが来訪、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていくことになり―。RPG的興奮と壮大な神話世界を融合させた未曾有の創世記! (裏表紙引用)
恒川さんの文庫新刊。今までの作品とは随分ジャンルを変えてきたなあ。SFとはね。まあ買ったモンはしょうがないので読んでみる(←失礼すぎ)。
主人公は34歳・無職の斉藤夕月。買い物帰りにやってみたくじ引きで、一等の「スタープレイヤー」が当たる。気がつけば別の惑星に連れてこられ、10の願いを叶えてくれると言われるのだが――。まあいわゆるRPGの小説版。「スタープレイヤー」と呼ばれる人間は、運営フルムメアに与えられた「スターボード」に願いを書き込むとそれが審査され、認可されたものだけが叶う。夕月は宝石で出来た池や壁など、豪華絢爛な庭園を拵える。あと若さと美しい容姿。まあ女性なら誰もが真っ先に願うかな、というような願いばかり。出版物を全て網羅した図書館がとてもとても羨ましかった。
元の世界と自分との関係や惑星での人々との交流など、まあそれなりに面白くはあった。だが、まあどこでも人が集まると考えることは同じ。領土争いが起こって戦争が始まって。しかしスターボードがあれば勝てるし重要なキャラが死んでも「どうせ生き返るんだろう」と思ってしまうので緊迫感があまりないかな。綺麗な心でしか乗れない筋斗雲じゃないが、汚れた心の人間はこの惑星に入れないとかそういう設定必要だったと思うんだけど。それじゃ物語にはならないか。