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バッタを倒しにアフリカへ  (ねこ4.2匹)

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前野ウルド浩太郎著。光文社新書

 

◎バッタ被害を食い止めるため、
バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。
それが、修羅への道とも知らずに……。

◎『孤独なバッタが群れるとき』の著者が贈る科学冒険ノンフィクション!

【本文より】
バッタの群れは海岸沿いを飛翔し続けていた。
夕方、日の光に赤みが増した頃、風向きが変わり、大群が進路を変え、
低空飛行で真正面から我々に向かって飛んできた。
大群の渦の中に車もろとも巻き込まれる。
翅音は悲鳴のように重苦しく大気を振るわせ、耳元を不気味な轟音がかすめていく。
このときを待っていた。
群れの暴走を食い止めるため、今こそ秘密兵器を繰り出すときだ。
さっそうと作業着を脱ぎ捨て、緑色の全身タイツに着替え、大群の前に躍り出る。
「さぁ、むさぼり喰うがよい」

 

 

話題になっていて気になったので読んでみた。買える値段だったしパラパラしてみたらイケそうだったし。馴染みのないレーベルなのでジュンク堂で検索してウロウロ。たくさん面陳列していたのですぐ見つかった。笑っちゃうよね、この表紙。

 

本書は、バッタ研究に生死を賭け、人生をバッタと共に歩まんとする若き昆虫学者がバッタ研究のためにモーリタニアへ飛び、その情熱と知識で成果を上げ、念願の昆虫博士となるまでの記録。ユーモア満載、ドキドキハラハラの冒険いっぱいの楽しい楽しいバッタ本で、バッタに興味がなくてもきっと惹きつけられる。空港でいきなりビールを取り上げられ落ち込んだり(何しに行くんだ)、せっかく出向いたのにバッタが発生しなかったり、サソリに刺されて死にかけたりとまさに波乱万丈。

 

とは言え生活必需品を売っているスーパーもあるし美味しい中華料理店もあるし、研究所がキャンプ用のテントや毛布などを貸してくれるし、「結構いけるもんなんだな」と安全地帯からホっとしてみる。バッタには群生相と孤独相があるとか歯磨きの木というものがあって意外と使えるとか一般人にとっての豆知識も多い。モハメッド姓が多くて、本に出てくるたくさんのモハメッドさんは全て別人だというのも吹いた。。エアコンの室外機が待合室に向けて設置してある郵便局とか(笑)。

 

野外調査の面白さもさることながら、この本の魅力はやはり著者の人柄にあると思う。バッタが好きで、研究が好きで、博士になってずっと研究をしながらお給料をもらいたいという切実な願い。熱くユーモア溢れるその人柄と研究の珍しさで様々な方面から助力を受け、道を切り拓いた著者は本当に凄い。ファーブル博物館を見学した章は、まさに「人ってここまで感動できるのか」と思った。「アフリカを救いたい」はもちろんだが、著者の「バッタが好きだ、研究がしたい」という強い気持ちが伝わる。それでいいんだと思う。

 

ちなみにわたくし、昆虫全般大嫌いなので( ×m×)オエェとなるお写真も多々ありました(でも写真に添えられているコメントが面白いのだ)。それでも、とても良かったので著者の他の作品も読んでみるつもり。