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アイネクライネナハトムジーク  (ねこ4.2匹)

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妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL…。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。(裏表紙引用)

 

 

本作は伊坂さんの二作目の「恋愛小説」だそう。読んでいてそんなに「恋愛もの」って印象はなかったのでビックリ。言われてみれば恋愛ものだなあと分かるぐらいで。私にとっては伊坂さんの作品は伊坂さんの作品でしかないからねえ。他の作家で代替できない。

 

この作品は斉藤和義さんに作詞を依頼され、詞の代わりに小説を描いたのだとかなんとか。それで作中に斉藤和義さんの作品の歌詞が色々引用されているらしいのだが、すっ、すいません、全く分かりませんでした。(嫌いとかではないんだけど縁がなくて)読後にそれを知ったので、作品に登場する「斉藤さん」ってそういうことかと今わかったぐらいで。
しかし作品はとても良かった(すまんこんな読者で。。)

 

「アイネクライネ」
調査会社で働く青年。街頭アンケートをきっかけにした出会いの物語。特に何も起こらない話なのだが、大好きな「トイ・ストーリー」のバズが物語を動かしていたのが個人的には嬉しかった。しかし凄い偶然だね。いわゆる男が夢見る再会の形じゃなかったのが好印象だなあ。いかにも女性の仕事って感じじゃなくてね。

 

「ライトヘビー」
美容師の美奈子と、お客であり友人である香澄。香澄の弟を紹介された美奈子だが、弟とはいつも電話で話すだけだった。いやあ、弟の正体にビックリ。そうくるか。演出がいいんだなー。そういえば、テレビ電話が思ったほど普及しなかったのは相手によってはいちいち着替えたり化粧しなきゃいけない煩わしさがあるからかな。

 

ドクメンタ
1話で出てきた調査会社員の藤間が登場。妻が娘を連れて出て行ってしまう。免許更新のたびに顔を合わせていた子持ちの女性が、夫とうまくいっていないという。これでこの女性といい関係になるとかいう話にならないのが伊坂さんだなあ。結末は読者に想像を委ねているけれど、実際どうだったんだろう。同じことをする人がこの世に2人いるとは思えないけれど(笑)。

 

「ルックスライク」
普通の高校生、久留米和人は父親と風貌が似ているのをとても嫌っていた。一方、大学生の朱美はクレーマーから助けてくれた同じ大学の青年と交際を始める。いわゆる「まさかあの人がこの人でこの人があの人だったとは」なのだが、何十年も経ってどうしてるかわかった元友人を見たような感覚を味わえた。

 

「メイクアップ」
化粧品会社社員の結衣。高校時代いじめられた女性が広告営業として現れる。復讐するしないというキレいな話ではなくて、一方で許し一方で溜飲を下げるというやり方が1番いいのかも。

 

「ナハトムジーク」
今までの登場したキャラクター全員集合?ほぼボクサーの話なのだが、彼にまつわる周辺の人々の行く末と今という感じ。

 

以上。今まで以上にリンクが楽しめる作品集だった。過去作のアレを読んでいないとわからない、ということもないし。凝ってるのに凝ってるぜ!っていう気負いもないし。微笑ましい作品ばかりでかなり好きなほうかも。