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王妃の帰還  (ねこ4匹)

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柚木麻子著。実業之日本社文庫。

 

私立女子校中等部二年生の範子は、地味ながらも気の合う仲間と平和に過ごしていた。ところが、公開裁判の末にクラスのトップから陥落した滝沢さん(=王妃)を迎え入れると、グループの調和は崩壊!範子たちは穏やかな日常を取り戻すために、ある計画を企てるが…。傷つきやすくてわがままで―。みんながプリンセスだった時代を鮮烈に描き出すガールズ小説!(裏表紙引用)

 


柚木さんといえば、女子の複雑で微妙な心理を描き出す作家として定着している感があるが、本書はその本領が発揮された作品かも。本書の舞台はカトリック系のお嬢様学校で、中等部二年生というまさに「中二病」を地で行く世代。お姫様グループから脱落した滝沢さんを自分たちの地味子グループに迎え入れるハメになった範子たちの奮闘がリアルに描かれていて、苦笑したり共感したりと忙しく読ませてもらった。

 

私自身も女子校だったのだが、まあ確かにグループ分けってのは存在していたけれどここまで頑なではなかったなあ。グループから脱落した子は他のグループに入れるっていうのがかなり変わってるな、と。自然とそうなるもんだけども。この、学校の世界が全てで、クラスであぶれたら生きていけないという狭い価値観を見事に描き出していたと思う。友だちの影響を受けやすいのも吸収しやすい年頃だからだし、王妃にとっても誰にとっても必要な通過点だったのかなと。今にして思えばバカバカしい心理だけれど、見下す気にはなれないな。

 

こういう小説がウケるのは、「自分よりちょっと劣っている登場人物」を見下ろせるからじゃないか、という思いも私にはあったりする。だけど、範子が最後に「上も下もない」と気付いたように、劣っている人、嫌われている人を見て、=自分が正しい、と思い込んでしまうのは人間誰しも同じじゃないか。大人になっても、人の欠点をあげつらう人を見て逆にその人のイヤなところが浮き彫りになるという経験は多々ある。範子の年齢でそれに気づけるのは現実にはなかなかないことだと思うし、人間が出来た人ばかりの集団も見てて気持ち悪いと思うけどね。私も範子と同じ、内面を掘り下げる生き方が自分に合ってるから。