すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

パリ警察1768  (ねこ3.7匹)

イメージ 1

真梨幸子著。徳間文庫。

 

1768年。革命前の爛熟したパリで、女の惨殺死体が発見された。かつて美貌の青年侯爵サドとの醜聞で、パリ中に名を知られた娼婦をいったい誰が殺したのか。パリ警察で、放蕩貴族を監視する特殊任務につく私服警部マレーは、事件の真相を探るべく、奔走するが…。歴史ロマン×警察小説の革命的融合!ベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』の著者の原点にしてライフワーク作、登場!(裏表紙引用)

 

 

真梨さんの読みこぼしを。イヤミス作家として有名になった真梨さんにこんな異色作があった。真梨さんが歴史ミステリ??と思って避けていたのだが、読んでみるもんだ、面白かった。

 

舞台はフランス革命前のパリ。史実と虚構を入り混ぜながら、外科医の息子にして私服警部マレーの視点を借りて残酷な女性殺害事件を紐解いてゆく。馬車に残された胎盤やサド侯爵と事件の関わりなど、謎が謎を呼びそして当時のパリの世相が読みやすい筆致で描かれる。読者は必ず、この作品で描かれるパリの腐臭、不潔さに眉を顰めることになるだろう。川には死体が浮かび、天からは糞尿が撒き散らされ、嫌われ者はその死骸さえも蹂躙される。少女の背中が汚れた泥を拭う道具にされようとするシーンでは本気で気分が悪くなった。

 

ミステリ的には目を見張るべき点はないものの、キャラクターの出生や隠された謎が明かされた時は素直に驚いた。マレーとその従順な弟・トマとの関係性も読ませる要素のひとつ。それにしても・・・すごい時代だ。お得意のイヤミスというジャンルではないかもしれないが、この時代を描くのに真梨さんの個性がぴったり合っていると思う。デビュー前の作品らしいがこの系統もぜひまた読ませて欲しい。