すべてが猫になる

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笑うハーレキン  (ねこ3.7匹)

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道尾秀介著。中公文庫。

 

経営していた会社も家族も失った家具職人の東口。川辺の空き地で仲間と暮らす彼の悩みは、アイツにつきまとわれていることだった。そこへ転がり込んできた謎の女・奈々恵。川底に沈む遺体と、奇妙な家具の修理依頼。迫りくる危険とアイツから、逃れることができるのか?道尾秀介が贈る、たくらみとエールに満ちた傑作長篇。(裏表紙引用)

 


道尾さんの文庫新刊。
一応ミステリだけれど、作風はコメディになるのかな。元家具職人の東口が息子を失ったことで離婚し、会社も倒産、ホームレスとして家具職人の仕事を仲間と続けるというお話。東口には「疫病神」が憑いていて、彼に色々と警告をしたりいちゃもんをつけたり。地道に仕事を1人で続けているところへ、謎の女性・奈々恵が弟子にしてくれと乗り込んでくる(まさにトラックに乗り込んでくる^^;)。そして次々と発生する事件、という感じ。

 

もちろんミッチー作品であるから一定以上は面白いしよく出来た作品だとは思うのだが。申し訳ないが、あまり好きなほうのミッチー作品ではなかったなあ。カッコつけてもしょうがないので言うが、ホームレスというのがダメだったのかも。でもそれ以上に、東口の人間性に嫌悪感があった。ストーリー自体も前半はこれと言った起伏がない(奈々恵の参加くらいかな)。そのストーリーを動かすためとは言え、別れた妻の再婚相手に起こした行動は到底理解出来るものではなかった。何も変わってないじゃん、この人。いくら最後に成長すると言ってもこれじゃ到底信頼出来る人間とは言えないなあ。別れた理由もなんだかなあ。こういうタイプの人って、後からこんな風に父性って湧いてくるものなの?甚だ疑問。

 

後半の唐突なサスペンス的展開にもついていけない自分がいた。コメディならば許されるのかな?どう考えても、あれで相手が引き下がるのは不自然だと思うのだが。

 

ちょっと辛口になってしまったが、読ませる面白さがないわけではなかった。後半の協力者「スカ」は魅力ある人物だったし重い過去を持つ奈々恵のキャラクターにも奥行きがあったと思う。明るいドタバタ劇でありながら、現実の悲しさ、難しさが描かれていたのが辛かったのかな、自分。最後に伴う光は、希望のそれよりも彼らには眩しすぎて流す涙のほうに感じた。