すべてが猫になる

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湿地/Myrin (ねこ3.8匹)

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アーナルデュル・インドリダソン著。柳沢由実子訳。創元推理文庫

 

レイキャヴィクの湿地にあるアパートで、老人の死体が発見された。侵入の形跡はなし。何者かが突発的に殺害し逃走したらしい。ずさんで不器用、典型的なアイスランドの殺人。だが、残されたメッセージが事件の様相を変えた。明らかになる被害者の過去。肺腑をえぐる真相。ガラスの鍵賞2年連続受賞の快挙を成し遂げ、CWAゴールドダガーを受賞した、北欧ミステリの巨人の話題作。(裏表紙引用)

 


今年最後の読書記事。来年に持ち越すつもりだったのだが、マイベスト海外編の10冊に1冊足りないことが判明し、コレを入れたいなと思ったので無理矢理。

 

というわけで初読みインドリダソン。アイスランドの作家ということで、今北欧ミステリで1番熱い作家なのだとか。土地柄なのか個人的なイメージなのか、「熱い」感じは全くなく、淡々としていたような。エグい殺害方法!とか、残忍な犯人!とか、重く暗い過去!みたいな昨今流行りのサスペンスとは一線を画す感じがあった。

 

主人公はレイキャヴィク警察犯罪捜査官のエーレンデュル。妻とは離婚しており、2人の子どもがいるがどちらも問題児。娘のエヴァはドラッグ漬けで妊娠までしているし言葉使いも酷いし。そんなプライベートの問題を抱えながらも、真摯に事件に仕事に向き合うエーレンデュル。アパートで起きた老人撲殺事件を捜査するうちに、この被害者がとんでもない悪党だったことが判明する――。

 

真相は本当に唾棄すべきおぞましいものだ。1人の悪党が起こした犯罪が、複数の良心ある人間の人生を、その家族もろとも台無しにしてしまう。それが幼い子どもにもたらされるものならなおさら。捜査は人々の隠したい過去を暴き、多くの人々を傷つけながらもその執念で解決を導く。ある意味淡々とした文章で綴られるこの作品、「興奮したい、どんでん返しを味わいたい」向きには合っていないとは思うが、清麗で上品な雰囲気をサスペンスで味わいたい気分の時にはぴったりではないだろうか。

 

ところで、本作はシリーズ第3弾で合っているのかな。シリーズ途中だからか、家族問題とか色々曖昧なままなんだよね。ウィキを見たらそんな感じなのだが媒体によって第何作、と書いてある数字が違うんだよね^^;邦訳されてる「緑衣の女」が4作目で「声」が5作目、1,2作目はまだ日本で読めないってことでいいのかな?