すべてが猫になる

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虎と月  (ねこ3.7匹)

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柳広司著。文春文庫。

 

父は虎になった。幼いぼくと母を残して。いつかは、ぼくも虎になるのだろうか…。父の変身の真相を探るため、少年は都へと旅に出た。行く先々で見聞きするすべてが謎解きの伏線。ラストの鮮やかなどんでん返し!中島敦の名作「山月記」を、大胆な解釈で生まれ変わらせた、新感覚ミステリ。 (裏表紙引用)

 


山月記」のパスティーシュということで。学生の時、教科書に載っていた作品だと記憶しているが、内容を思い出すまでには至らなかった。以前、こちらを読みかけてすぐにやめてしまったので文庫版を買いなおして再挑戦。200ページほどの児童書なのでするすると。

 

物語としては「母をたずねて」みたいなものなのだが、父の親友に「父は虎になった」と聞かされた少年が真相を求め父を探し渡り歩くというお話。悪人と間違われミノムシのように吊るされたり子どもたちに蹴られたりと散々な目に遭いながら、父が虎になったという謎を解いていく。

 

解釈はなかなか面白く、ミステリとしても楽しめた。余韻を残したラストもありがちかもしれないが上手だなと。父と息子が再会し感動の抱擁で涙うるうる、とかではなく、幼い息子が父を尊敬しやがて立派な大人になるのだろう、と想像させる成長譚かも。