浦賀和宏著。徳間文庫。
富士樹海近くで合宿中の高校生文芸部員達が次々と殺されていく。いったい何故? 殺戮者の正体は? この理不尽かつ不条理な事態から、密かに思いを寄せる少女・美優を守る! 部員の八木剛は決意するも、純愛ゆえの思いも空しく……!? 圧倒的リーダビリティのもと、物語は後半、予測不能の展開を見せる。失踪の調査対象“八木剛”を追う保険調査員琴美がたどり着いた驚愕の事実とは!? (裏表紙引用)
浦賀氏の文庫書き下ろし新刊、ノンシリーズ。
読後、あはははは(;´∀`)。という声しか出ないであろう、究極の実験小説。ネタバレになるので内容については語れないが、浦賀氏らしさマックスレベルの非一般向け小説であることは断言出来る。
こういう人を食ったタイトルを浦賀氏が出したということには絶対に意味がある。デビュー作品からなにから、伝説のあのシリーズから、ベストセラー作品を生み出すまで追いかけてきたファンだからこそ、それは分かる。それなりの覚悟を持って読み始めたのだが、予想のさらに斜め上を行く作品だった。冒頭からの、文芸部の合宿で生徒たちが次々と殺人鬼に襲われるという物語はとても普通で、面白く読めるだろう。だが、物語が一段落してからの作中作に次ぐ作中作が読む者のメンタルを揺り動かす。正直に言えば、よくこれを天下の徳間書店が出版を許したなと思えるレベルだ。それを言うと、「あのシリーズ」の時もそう思っていたが。浦賀氏の自虐的な自作品への謙遜も伺え、どこまでが冗談なのかと疑う。出版業界を憂いたものとも解釈していいが、浦賀氏だからなあ。