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元気なぼくらの元気なおもちゃ/Tough,Tough Toys for Tough,Tough Boys (ねこ3.7匹)

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雨のハイウェイで、ヒッチハイカーを拾った精神分析医。解体されているのは、こいつなのか俺なのか―。嘘、嘘、嘘、嘘、みんな嘘っぱち。洒落た悪ふざけか、洗練された悪趣味か。壁の中のコカイン。害虫との共同生活。異性恐怖症者が飼う巨人。刑務所の創作教室…退屈な通俗性を揺さぶり、ツマラナイ日常をひっくり返す、現代イギリスを代表する奇才の本邦初短篇集。(裏表紙引用)

 


読み切った自分に万歳。そして訳者に乾杯。奇想コレクションの中でもとりわけぶっ飛んでいると噂の本書。イメージしていたほどのつっかえもなく、少しの不快感と多くの疑問符の中だけで読み終えることが出来た。ここまでびびっていたのには理由があって、このウィル・セルフという作家の経歴がとんでもなかったからだ。12歳で麻薬を始め、17歳では立派な麻薬中毒者。20代半ばで薬物&アルコール中毒で入院。だが作家活動に弊害が出るためすっかり依存を断ち切ったという。それでオックスフォード大学哲学科卒、妻と3人の子供がいるというのだから驚く。

 

出だしの「リッツ・ホテルよりでっかいクラック」から薬物ノリが強烈で、次の「虫の園」でも同じような感じだったら挫折しよう、と決めるも虫と共に生活を始める青年が不気味かつ明るい陽気さで面白かった。

 

次の「ヨーロッパに捧げる物語」はIQの高すぎる赤ちゃんを恐れる両親のお話で、これが歴史と絡み合い意味不明だが味のあるストーリーとなっている。人気の高い「やっぱりデイヴ」は私はそれほどでもなかったが、行く先々で必ず会う「デイヴ」というのが荒唐無稽で良い。他は意味がわからない。

 

荒唐無稽と言えば「愛情と共感」だろうか。「内なる子供」が肥大化して「大人」と寄り添って生きる物語だそうだ。意味がわからんが。表題作「元気なぼくらの元気なおもちゃ」はなかなかのお気に入り。ヒッチハイクで拾った男にとにかく親切にする男だが、これは2人ともに狂気を感じるな。常識とか説いてるあたりが逆にそういう印象。

 

ボルボ七六○ターボの設計上の欠陥について」は「元気なぼくらの~」の続編だが前日譚。よくわからない^^。この作品唯一の中編と言える「ザ・ノンス・プライズ」は「リッツ・ホテルより~」の続編。子供を性的虐待のすえ殺した(とされている)男が、刑務所で小説の創作コンクールに応募するというなんやねんこれ的なストーリー。意外や意外、設定は狂っているが、ちゃんとした読める普通の小説だった。


以上。1編目ではどうしようかと思ったが、意外と読めた。意味が本当にわかって読める人いるのかな?と思うぐらい、意味不明の薬物小説だという印象。その割にはとっつきやすかったような?他の作品を読みたいとは思わないが、最後の中編のようなものが他にあるといいなとは思う。