すべてが猫になる

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ノエル  (ねこ4.5匹)

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孤独と暴力に耐える日々のなか、級友の弥生から絵本作りに誘われた中学生の圭介。妹の誕生に複雑な思いを抱きつつ、主人公と会話するように童話の続きを書き始める小学生の莉子。妻に先立たれ、生きる意味を見失いながらボランティアで読み聞かせをする元教師の与沢。三人が紡いだ自分だけの〈物語〉は、哀しい現実を飛び越えてゆく――。最高の技巧に驚嘆必至、傑作長編ミステリー。(裏表紙引用)

 


なんて素敵な作品なんだろう(ToT)。道尾さん、なんて素敵なお話を描くんだろう。やはりこの作家さんは私にとってどうしても別格だ。いつまでも読んでいたかったよ。

 

読む前は長編だと思っていたが、3篇のお話が繋がる連作短篇集だった。

 

「光の箱」
これは実はアンソロジーで既読だったのだが、途中までそうと気付かなかった^^;タクシーに轢かれるシーンで「あ、これ絶対読んだことある」と思って調べたらそういうことだったという。だが内容を忘れていたため、充分楽しめたし、驚けた。酷いイジメに耐える主人公の圭介が、絵を描くのが得意な少女・弥生と出会い、絵本作家になるまで。厳しい現実と、甘い恋人。そして事件、誤解。同窓会という状況から、過去を紐解いていく。真実へ結ぶ物語の流れと、ミステリ的な騙しが見事だ。


「暗がりの子供」
小学生の莉子は、妹の誕生を控え不安定な精神状態にいた。莉子を救ってくれるのは優しい入院中の祖母と、創作だけ。ひな飾りに隠れて盗み聞いた両親の本音が、莉子の心を蝕んでゆく。。。莉子のおまじないが切ないな。このお話も同じように、主人公に辛い試練が待ち受けている。そして、不幸の階段を駆け下りてゆくのかというこちらの想像を、優しい形で裏切ってくれる。


「物語の夕暮れ」
子供たちの前でおはなし会を開いている与沢老人は、先日最愛の妻に先立たれ、生きる気力を無くしていた。おはなし会を引退し、与沢にはある考えが――。自分の語るお話で、子供たちに大きな影響を与え、きっと将来お礼の手紙などが何度も来るのであろうという期待の気持ち、それが叶わなかった時の気持ちに少し寄り添えるような気がした。お話をつくることにより、そのお話の世界に逃げるのではなく、帰って来るのだという言葉に共感した。二話目の主人公がまさにそうだった。仕掛けとしては「リンク」が必然的ではなかったのは残念だった。だが、人と人が繋がっているのは素敵なことだ。


そして最終話で、三つのお話が繋がる。個人的には繋がらなくても感動に差はないのだが。道尾さんの描く世界はとても優しく、そして厳しい。苦労なくして感動あるものかとすら思う。1つ1つの登場人物のエピソードが具体的で生々しく、作者自身の繊細さを確信する。テクニックだけなら才能と評するが、道尾作品を生み出しているのはもっと別の何かだろう。