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私の家では何も起こらない  (ねこ3.9匹)

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小さな丘の上に建つ二階建ての古い家。幽霊屋敷に魅了された人々の記憶が奏でる不穏な物語の数々。アップルパイが焼けるキッチンで殺しあった姉妹、床下の動かない少女の傍らで自殺した殺人鬼の美少年…。そして驚愕のラスト!ようこそ、恩田陸の幽霊屋敷へ。(裏表紙引用)

 

 

恩田さんのホラー短編集。ある幽霊屋敷にまつわる事件を巡って、様々な立場、視点から物語を映し出している。短編集の形を成しているが、最後の1篇で1つの物語としてまとまりを見せる作品となっている。語り手が次々と変わり、物語の表情も変わっていく。200ページほどの短い小説なので複雑なわけではないが、内容はしっかりと濃い。

 

個人的には淡々とした女の語り口が特徴的な表題作と、「私は風の音に耳をすます」が好きだった。ホラーらしいホラーで、地下室の不気味な雰囲気と無邪気な女児の語り口がかえって恐ろしい。ラストの真相はまじでこわい。

 

しかし、ラストの1篇だけはどうか。恩田陸らしいと言えばらしいが、元が曖昧に終わってこそ美しいゴーストストーリーなだけに、余計なものだったのでは?大きな不満というほどではないが、ハシゴを外されちゃった感がちと残念。それを除くと恩田作品の中では良く出来たほうかも。少なくとも私にはちょうどいい。