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デッドマン  (ねこ3.8匹)

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河合莞爾著。角川文庫。

 

頭部がない死体、胴体がない死体、右手がない死体…。遺体の一部が持ち去られる猟奇殺人事件が6件連続して発生した。捜査が混乱を極める中、ある日本部に1通のメールが届く。僕は継ぎ合わされた死体から蘇った死人です。僕たちを殺した犯人を見つけてください―。鏑木警部補率いるクセ者揃いの特捜班が前代未聞の謎に挑む。度肝を抜く結末が待ち構える警察小説新次元!横溝正史ミステリ大賞受賞作、待望の文庫化。(裏表紙引用)

 


初読みの作家さん。あまり今年は新規開拓はしたくなかったのだが、横溝正史ミステリ大賞受賞作であり、ブログ仲間さんたちがこぞって好評価だったので読む決心をした(半月で決意表明返上)。

 

最初に紹介として書いておくと、これは島田荘司氏の「占星術殺人事件」のオマージュ作品だということ。ストーリー上は読んでおく必要はないが、読んでいたほうが楽しみの数は多いだろうとだけ言っておく。

 

個人的な意見だが、軽いノリの警察小説は好まないほうではない。が、この作品のキャラクターは全員好かん(笑)。主人公鏑木にこれといった個性がないのに異常なほどの頭脳明晰さは違和感ありまくりだったし、チームの連中のドタバタ騒ぎには虫唾が走った。ペット用の消臭剤を人体にかけるとか男のくせに(偏見ですまそ)血液型を持ち出して人を非難するとか。。ユーモアなのは理解出来るが。チームのわざとらしいほどの正義感や、仲間意識にも失笑するしかなかった。

 

さらに、事件自体が異常な割に推理した動機が平凡の極み。あっさり分かりすぎ。というわけで、中盤まではロクな感想を抱いていなかったのだが。どうしてどうして、そこから畳み掛ける展開、真相が腹が立つほどにしっかりしていた(笑)。意外性もあり、警察小説ならではの緊迫感もあり。デッドマンが実は○○だった、というのは某有名作品にあったネタなので(まさか作者があの有名作を知らないはずはないので意識してのことだろう。そうだとすればむしろこの挑戦を評価したい)驚きはしなかったが、異常者を扱った非リアリティを特色としたミステリーと思わせて、実は、、、というテクニックだと思えば降参するしかない。

 

最初あんなに反感だらけだったこの作家さん、次が出れば必ず読むことになりそうだ。デビュー作ゆえの気になる点はあるが、世間の評価も納得の出来。