すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

さよなら神様  (ねこ4.2匹)

イメージ 1

 

 隣の小学校の先生が殺された。容疑者のひとりが担任の美旗先生と知った俺、桑町淳は、クラスメイトの鈴木太郎に真犯人は誰かと尋ねてみた。殺人犯の名前を小学生に聞くなんてと思うかもしれないが、鈴木の情報は絶対に正しい。鈴木は神様なのだから―(「少年探偵団と神様」)。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させた神様探偵が帰ってきた。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに。(紹介文引用)

 


麻耶さんの新刊。ミステリーランド神様ゲーム」が物議を醸したことは記憶に新しいが、まさかの続編。前作が児童向けだったとは全く全然ちっとも思わないが、今作は主要人物が全て小学生であるだけでほぼ大人向け。その麻耶さんだが、またやってくれた、ひゅーひゅー。

 

一応連作短篇集の体裁は取っているものの、それぞれの短篇だけを個別に読んだら意味を成さない(形にはなっているが)、ほぼ長編と言っていい内容。探偵役が神様というだけでふざけているが、推理をするのはもっぱら「久遠小探偵団員」を標榜する小学生4人。顔が不細工というだけでスターの座から落ちてしまった市部(もうこの設定からしてヒドイ)、霊感があり見た目も怪しげな雰囲気をまとう比土優子、親がPTAということで情報通を自称する丸山、そして語り役の桑野。

 

この作品の大きな特徴は、それぞれの作品の一行目で事件の犯人の名前を記しているところだ。神様である鈴木による託宣という形を取っているのだが、その信憑性はいかに、といったところ。クラスのほとんどは信じているが、探偵団の一味は話半分という感じ。桑野は信じたいけど信じていいのか、という間で揺れ動いており、ダメだと思いながらも毎回鈴木に犯人を聞いてしまう。

 

さらに面白く他と違っているのが、その犯人が毎回、桑野たちの超身近な人物であるということ(笑)。そして、毎回真相がはっきりしない(笑)。もっと言えば、この作品は3編目まではプロローグでしかないのではないかと思えるあたり。4編目で騙されていたことに気付き、かーらーのーーー!!地味な背負投げが決まってゆく。


おっと、興奮して全て書きそうになってしまった。
そして読後の感想が、「まさかの胸キュンラブストーリーだったとは」という(笑)。わけわからんが、わけわからなさで言えば麻耶作品にしては大人しめのレベル。もちろん今回もファン以外には全くオススメしないが、感想を書いているのがほぼファンなのであろう、なんという評判の良さ。泣ける。デビュー当時から全く作風を変えず、一貫したこの姿勢。本格ミステリでありながら、前衛文学と言ってしまいたいくらい狭く狭くマニアのツボをきゅっと掴む、麻耶雄嵩という名の神様。