すべてが猫になる

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不発弾  (ねこ3.5匹)

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乃南アサ著。講談社文庫。

 

 今度はあなたが、爆発させてみる? 退屈な日常から逃れられるきっかけなんて、どこにでも転がってる。デパート勤務の的場智明は、地味な売り場での仕事に耐える日々を過ごしていた。そんな折、息子や娘の、“秘密”を妻までが一緒になって隠していたことに気づく。たまりにたまった憂さをはらすために彼がとった行動とは……。表題作など、現代人の爆発寸前の心境を的確に捉え、見事な筆致で描く、秀逸短編集。(裏表紙引用) 

 


「かくし味」
栄通りの「みの吉」の常連になった若いサラリーマンが、経営者の夫婦や常連たちと月日を共にして行く物語。この店の売りである’煮込み’、確かに美味しそうなんだけど、私、20年洗ってない鍋とか無理かも^^;潔癖ぶるつもりはないのだけど、だって、虫とかまつ毛とかホコリとかいっぱい入ってそうじゃん。と、思ったらオチの恐怖もそっちのほうがマシに見えたりして^^;

 

「夜明け前の道」
妻と子に去られ、栄光ある職場からも追いやられ、悶々とタクシー運転手稼業に身を費やしている男がついにキレた――。なんというか、ベタな立ち直り方だと思う。以上。

 

「夕立」
お小遣い欲しさに痴漢冤罪詐欺をしている少女2人。今度の獲物は、ある学校の教頭だったが――。調子に乗りすぎたな、これは。ポケベルとかピッチとか時代を感じる。でもやってることは現代と変わらないね。

 

「福の神」
ある料亭の物語。常連のある迷惑な男とそれを見つめる謎の客と、過去あるおかみが体験したちょっとした出来事。気の毒になるぐらい、哀れな酔い方、薄っぺらい人間性。それと対照に描かれた男がスーパーマンに見える。ホロリと苦い人と人の繋がりの物語。

 

「不発弾」
うわあ、お父さん可哀想^^;多分、普通のいい父親、夫なんだけどなあ。家族には不満なんだなあ。もう少し、「家族」という型にはまらずに個人として向き合うべきだったんだろうなあ。でも可哀想だなあ。表題作だけに一番これが良かった。

 

「幽霊」
テレビ局で制作の仕事に携わっている男は、過去の失敗が元でつまらない番組を作るだけの「幽霊」になっていた。そんな折、懇意にしていたタレントからいい話を聞かされ――。普通にいい話。がんばってね。


以上。
なんだか適当な感想になってしまったが、そんな感じだったもので。全体的に暗いお話や気の滅入るお話が多いのだが、今読むと物足りないぐらいだ。数年前は時々好きで読んでいた作家さんなのだが。ただ、人って根本的にはそれほど昔と変わっていないと思った。だからそれなりにはやはり面白い。