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インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実  (ねこ3.8匹)

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真梨幸子著。徳間文庫。


一本の電話に月刊グローブ編集部は騒然となった。
男女数名を凄絶なリンチの末に殺した罪で起訴されるも無罪判決を勝ち取った下田健太。その母・茂子が独占取材に応じるという。茂子は稀代の殺人鬼として死刑になっ たフジコの育ての親でもあった。
茂子のもとに向かう取材者たちを待ち受けていたものは。50万部突破のベストセラー『殺人鬼フジコの衝動』を超える衝撃と戦慄のラストシーン ! (裏表紙引用)



前作「殺人鬼フジコの衝動」の感想を書かなかったのだが、なかなかスリリングで面白かったと前置きしておく。本書は前作でグログロしく不気味に描かれていたフジコの凶行と狂気を描いていたものの「裏側」を明かしたもので、フジコがなぜあそこまでの人間を殺害していったのか、その環境はどうだったかを克明に記している。語り手は雑誌の取材者の女性となっており、フジコの相棒・下田の母親の狂気がメインとして描かれるのが特徴。個人的な感想なのか作者の狙いなのかはわからないが、この茂子ママの狂気のほうが哀れなフジコよりも意味不明で恐怖心を煽られる。取材者が1分でも遅刻したらキャンセル、逆に10分早く着いてもキャンセル。かと思えば気に入ったと思われる取材者にはわざわざ食材を仕入れてまで朝食を振る舞い、独占インタビューに答える。いつ「がおー!」とつかみかかってくるかと、その笑顔に潜んだ恐ろしさが静かにこわい。


もちろん読ませる物語ではあるしラストの意外性も効いているのだが、トータル的に振り切りきれていない感も。このお行儀の良さが真梨さんの魅力でもあるしプロ仕様の作品ならではであるが。。。一般的に「わからない人」を描いたものより「隣の奥さん」的な女子のドロドロを描いたもののほうが好みかなあ。あ、ちなみに、「私はフジコ」という別冊短編を読んでからこちらに取りかかったほうが良いようです。